志岐さんと夏目くん
学園祭準備


………

……




それから更に数日が経った。


時々、他のクラスの人にあの日のことを聞かれることがあるけれど、



──「彼女のフリを頼まれただけ、詳しくは夏目くんに聞いてね」



と笑顔で言えば、みんなすぐに夏目くんのところへ向かった。

多くの人を誘導してしまって悪いな、と思ってはいるものの、それが一番楽だし確実だ。


……今日までずっと、夏目くんからのメッセージは届いていない。

もちろん私からも送っていない。

とくに話すことはなかったし、実際にも全然喋っていない。

朝に会ったら挨拶くらいはするけどね。


私たちはただのクラスメイトに戻り、私は前と変わらない日常を取り戻していた。




──放課後。



「よっしゃ、学園祭の準備頑張るぞー!!」



と元気よく言ったのは小日向くんだ。

そんな彼に



「口じゃなくて手を動かせよ」



と夏目くんが呆れた顔で言い、それに合わせて他のみんなも笑う。


気がつけば、学園祭まであと十日ほど。


私たちのクラスの出し物は、話し合いの末にメイド喫茶に決定した。

ただし、ただのメイド喫茶じゃなく……「男女混合のメイド喫茶」。

つまりは、男子も女子もメイドさんの格好をする、ということだ。


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