「お前達、兄弟に会って貰いたい人がいる。
わしとしては、お前達のどちらでもよい。」

じいさん(総帥)が、わざわざ会社に
出向いて何事かと思いきや·····

まあ、先に俺に話してくれて
良かったが·····

「俺が受けます。」
と、答えると
「良いのか、哲(さとし)に
聞かなくても。」
「はい。問題ありません。」
「そうか、わかった。
それなら、薫であちらには
連絡をいれる。
また、日程は決まりしだい
知らせる。」
「わかりました。」
と、俺が答えると
じいさんは、嬉しそうな顔をして
帰って行った。

俺と、兄・哲には、両親がいない。

俺が高一年で
兄・哲が高三年の時に両親は
飛行機事故で亡くなった。

そんな俺達が
小学生の時に隣に
引っ越して来た
永倉の両親が俺達兄弟を
可愛がってくれた。

じいさんは、俺達が両親の家で
暮らすことを許可してくれて
俺達の生活から全ての
面倒をずっと見てくれた。

だから、ではないが
俺も兄貴も、じいさんの役に
少しでも立ちたくて
大学を出て、じいさんの会社の
一つに入社して頑張ってきた。

今では社内から認められて
兄貴が社長
俺が、副社長をやっている。

いくら孫でも
力の無い奴を役員にするような
甘い人間ではない。
そんな、じいさんを認めさせる為に
二人とも必死でやってきた。

そんな俺達兄弟の癒しは
永倉家の娘である天音の存在だった。

小さい頃から
天音は、いつも俺達兄弟の後を
付いて回って、可愛くて
たまらない存在だった。

何も言わなくても
兄貴も天音に好意を抱いているのは
わかっていたし
俺も天音が好きだった。

だが、いつからか
天音の瞳に兄貴だけを
映しているのがわかった。

きっと、俺に遠慮して
二人が我慢している·····と。

だから·····
今回のじいさんからの話しは、
ちょうど良かったんだ。