「お前、見てなかったのか?
彩葉ちゃんの釣書。」
と、じいさんに言われた。

釣書?
見ていなかった。

俺の中には、天音がいるから
例え、実ることがなくても。

それに、佐久間の孫は、
男を手玉にとっていて
高飛車な女だと
聞いていた·····
誰が、言ってたかな?
確かにそうきいた。

「忠臣、すまないな。
あれは、人命を助けるのを
いの一番に考える娘での。
権利や体裁をもっとも嫌う。
お前の孫じゃが、彼では無理じゃ。
それに、こやつには興味がないのか
他に想い人が、いるのではないかな?
そんな失礼な奴には、
わしの大事な孫は、やれなんざ。」
と、言われて
「そんな···
と、訂正しようとする俺を手で制止し
じいさんが
「済まない。
彩葉ちゃんにも謝っておいてくれ
忙しいのに、来てもらって
申し訳ないと。
両親を亡くしてから
わしが育てて来た。
仕事も必死で兄を支えながら、
わしに応えようとしていたから、
大丈夫かと思っていたが、
わしの早とちりだったようだ。
本当に申し訳ない。」
と、頭を下げるじいさんに
情けなく唇を噛みしめ
拳を握りしめる。
「忠臣とわしの間は変わらん。
では、わしはこれでな。」
と、言われる佐久間の総帥に
「申し訳ありませんでした。」
と、頭を下げると
「忠臣を大切に思ってくれるのは
ありがたいが。
それだけでは、先はない。
良く考えることじゃのう。」
と、言うと側近の方に車のドアを
開けられて乗ると
車は、去って行った。

俺は、じいさんに
「申し訳ありません。私のせいで。」
と、言うと
「勇三の目は確かじゃ。
わしは、孫に対して
甘かったのかのう?
だが、勇三の話が本当なら
なぜ、そう言わなかった。
わしは、強制などするつもりは
なかった。」
と、寂しげに言われて
再度頭を下げるしかなかった。

すると、じいさんは
「この話しは忘れてくれ。」
と、言うと
車に乗り込み帰って行った。

なんだか····無性に悲しかった。

じいさんに呆れられたような
見放されたように感じて。