誰を?何を?見ているの?

☆☆理不尽な願い



翌日、兄にお願いして
お休みをもらった。

兄は、何か言いたげだったが
休む事を許可してくれた。

俺は、右田さんに教えてもらった
場所へと出向く。
駐車場で待ちながら
パソコンで出来る仕事をやる。

どのくらい、そうしていただろうか?

車が入ってきた。
降りたのは、彼女···だった。

パンツ姿で白のシャツを
さりげなく着こなしている。

長い黒髪は、結ばずに
風でなびいていた。

« 綺麗 » と、思わず·····

大きな花を抱えて歩き始める。
俺は、少し時間を置いてから
車を降りた。

彼女がどこに行ったか
不明だが、見つける事は
可能だと思っていたから。

やはり·····

彼女は、一つのお墓の前にいた。

花を手向けて
何かを話している。

その隣のお墓にも花を手向けて
何か話している。

こちらは、佐久間と
墓石に記載されているから
彼女の実家のだろう。

もう一つは······
« 青山家 »と、記載されている。
誰なんだろう。

彼女は、とても優しい顔を
しながら話をしている。

もっと、その顔がみたくて
動いたときに、サクッと音がして

しまった!と、思ったが
彼女が振り返り
怪訝な顔をした。

「すまない。こんなところまで。」
と、謝罪をする俺を
少しだけ見てから
お墓の方にむき
片付けを始めた。

「邪魔はしない。
あっちで待つから、少し話を
させてもらえないだろうか?」
と、再度声をかけると。

「誰にきいたの?」
と、口調は冷たい
「右田さんに。
無理矢理きいた。
何度も、何度もお願いして。
すまない。巻き込んで。」
と、言うが、彼女は何も言わずに
ため息をついた。

俺は、その場を離れて
お墓の入り口まで下がる。

暫くして彼女は、手桶を戻して
こちらに来た。

「それで、なんなの?
あっ、その前に、二度とここには
来ないで。」
「本当にすまない。
こんなところまで押し掛けて。」
と、頭を下げてから
俺は、じいさん・風間の総帥に
言われた話を正直にした。

彼女の表情からは
何も読み取れないが
俺は、話を続けた。

自分の両親は、他界していること

じいさんから育てられ
兄がずっと支えてくれた事

七光りと言われたくなくて
兄と二人で必死にやってきた事

回りの親族には、優秀な人材は
沢山いるが、風間の中枢の会社を
兄と二人任せられて頑張ってきた事を

それから、おもむろに土下座をして
「俺は、なんと言われてもいいんだ。
自分の仕出かした事だから。
だが、兄には関係無い。
兄は、今回の事は何も知らなかった。
話す必要ないと俺がじいさんに
言ったから。
勝手な事を言っているのは
わかっている。
君を巻き込んで申し訳ないと
思っている
だが、どうしても兄を守りたい
会社の社員を、その家族を
守りたいんだ。
だから、だから、頼む
俺と結婚してもらえないだろうか。
どうか·····お願いいたします。」
と、再度頭を地面につける。

どのくらい、そうしていただろうか

とてつもなく、長く思える
短くも思える

風がフワリ·····と吹く·····
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