「こちらが、シェリル様が滞在していただく客間になります。何か必要なものがあれば、何なりとおっしゃってくださいませ」

 その後、クレアさんたちに私が連れてこられたのは、屋敷の端にあるお部屋だった。クレアさんに扉を開けてもらい、その中に視線を移した私は……驚いてしまう。何故ならば、部屋の中がとても豪奢だったからだ。見るからにふかふかのカーペット。寝台はとても大きく、一人用には見えない。さらには、その側にあるソファーとテーブルもとても高価に見える。いや、実際に高価なものなのだろう。アシュフィールド侯爵家の屋敷にある客間とは大違い。……さすがは、王家からの信頼も厚い辺境伯爵家の屋敷と言うべきか。

「し、失礼いたします……」

 マリンさんに背中を押され、私は客間の中に入って行く。一歩足を踏み出せば、想像以上にカーペットはふかふかだった。それに若干引きながらも、私はとりあえずとばかりに持っていた小さな鞄を机の上に置く。この鞄一つで、私は嫁いできた。……いや、嫁ぐというのは少々語弊があるな。実際は、追いやられたということなのだろう。……ギルバート様に失礼だから口には出さないけれど。

「シェリル様には、ほとぼりが冷めるまで……そうですね、一ヶ月から三ヶ月ぐらいはこちらに滞在していただくことになるかと思います。もちろん、お客様として滞在していただくので、しっかりとおもてなしはさせていただきます」

 クレアさんは、ぺこりと頭を下げてそんなことを言う。……お客様。突然押しかけておいて、そんな風に扱ってもらえるのが意外だった。しかし、私はお客様として滞在したくない。せめて、メイドになりたい。