「シェリル様。夕食の準備が整いましたよ」

 クレアに採寸されること、約一時間。疲れ果てていた私の元に、マリンがやってきてそんな知らせをくれた。……こ、これで美容関連の話から解放される……! そう思って、私は心の中で歓喜した。

(クレアには悪いけれど、ちょっとお話が難しすぎるのよ……!)

 採寸中、クレアは延々と私に似合いそうな色やデザインを、語ってくれた。そして、美容に関しても語ってくれた。しかし、私にはその大半が理解不能であり、さらには実家での装いも訊かれたのだけれど、私が身に付けるのは決まってエリカのお下がりだった。そのため、自分のために何かを仕立てたことなど一度もなかった。それを説明した時、クレアはとんでもなく怒り出した。……それこそ、この達観してしまった私が怯んでしまうぐらいには。

「用事が終わったのでしたら、今から食堂まで案内しようと思うのですが……?」
「では、よろしく」

 マリンのその提案をありがたく思いながら、私はクレアとマリンに連れられて、リスター家の屋敷を歩いていく。一階は客間や応接間、食堂などの客人が使うことがあるお部屋をメインに配置されているらしい。そして、二階はこの家の主一家の私室や執務室などがあるそう。三階は住み込みの使用人たちが住まう寮的な役割。それは、クレアが説明してくれた。私は、訊いてもいないのに。