「私は、シェリルです。シェリル・アシュフィールド」

 しばらく茫然としていた私だけれど、ハッとして軽く自己紹介をした。自己紹介をしないと、クレアさんにも迷惑だろう。名前も分からないと、いろいろな面で不便だし。

 私の自己紹介を聞いて、クレアさんは「シェリル様ですね!」と言ってニコニコと笑っていた。クレアさんが少し顔を動かすだけで、その橙色のサイドテールがふわりと揺れる。それがとても美しくて、私は視線を奪われてしまった。

「シェリル様は、ここに嫁入りすることになったのですよね?」

 そんな風に私がクレアさんのサイドテールに視線を奪われていると、不意にクレアさんは爆弾を落とした。……嫁入り。そう、私はこのリスター家に嫁入りをしに来ている。私としてはメイド希望なのだけれど、父が本当に手紙を出していた以上、そう言っても意味がないだろう。

「……まぁ、そう、ですね」

 私がクレアさんから視線を逸らしてそう言えば、クレアさんは「触れられたくないこと」だと判断したのだろう。「すみません、深入りしてしまって……」と眉を下げて謝ってきた。いや、確かに触れられたくないことだけれど、謝られるようなことでもない。元はと言えば、父が悪いのだ。根本の悪は私の父なのだ。