猫かぶりなカップル
「どうしたの?」

「このハリセンボン、まじお前にそっくりじゃね?」



小さいハリセンボンのキーホルダー。



全身トゲトゲでぷくっと丸く可愛い感じにデフォルメされてる。


「記念に買うか~」

「だからあたしはイルカだって」

「イルカよりぜってーこっちの方がお前らしいだろ」



そう言って本当にレジに買いに行った。



もー…。



確かにハリセンボンも可愛いけど、可愛いの種類が違うよね!



だったらあたしも…。



あたしは、キョロキョロと店内を見回す。



そして、「あった!」と、セイウチのぬいぐるみを見つけてきた。



ぶよぶよでデフォルメされてて可愛い。



「神城はこれね?」



レジから戻ってきた神城に見せた。



「ほんといい加減にしろよ…」

「可愛いからあたしもこれ買っちゃうもんねー」



あたしもぬいぐるみを購入。



ノリで買っちゃったけど、なんかちょっとウキウキしてる。



水族館を後にして、電車に乗った。



買ったぬいぐるみはしっかり抱えている。



今日は久しぶりに楽しかったから、こうして神城とお別れするの寂しいな…。



電車内では無言で。



ふと隣の神城を見ると寝ていた。



なんだかその寝顔が可愛いと思っちゃう…。



こっそりと、持っていたスマホで神城の寝顔を横から撮った。



かすかにしたカシャッという音で、神城がゆっくり目を開けた。



「…今なんかしたか?」

「何のこと? 電車の音じゃない?」

「あっそ…」



危なかった…。



撮ってるのバレたら、なに言われるか…。



そして、最寄り駅に着いた。



神城はここから歩いて数分らしいけど、あたしはここから更にバスに乗る。



楽しかった時間もここまでだ…。



別に、神城のことなんてどうでもいいけどさ…。



でも楽しかったもん…。



「じゃあね」

「ん、気をつけろよ」



背を向けて歩き出そうとした。



そのとき…。
< 27 / 92 >

この作品をシェア

pagetop