猫かぶりなカップル

クルミとユズ

連れてこられた神城の家はとにかくデカい。



芸能人の住む家って感じだ…。



白を基調にした室内は落ち着いていて素敵。



「紅茶でいいー?」

「うん、ありがとう」



柚子ちゃんが、キッチンからマフィンと紅茶のセットを持ってきてくれた。



「失敗したのってこのマフィン?」

「そう! 砂糖と塩間違えた!」



そんな笑顔でサラッと…。



見た目はめちゃくちゃ美味しそうだけど。



食べるの割と危険なんじゃ…。



試しに一口だけ食べてみた。



「~っ」



口いっぱいにしょっぱさの大津波が襲う。



これはやばい…。



殺人マフィンだよ…。



「柚子ちゃん! もったいないけど絶対捨てた方がいいこれ!」



「え~? でもこれ自宅で作りましたーって動画撮ってテレビ局送らないといけないんだけど…」

「作り直しな!」

「忙しくて今しかできる時間ない…」



ええー?



死んじゃうよ…。



柚子ちゃんはニコッと笑って、バッグから板チョコを取り出した。



「さっき駅前のコンビニでチョコ買ってきたの! これ溶かして上からかけたら何とかならないかな?」



ならないと思う…。



さっきから神城は我関せずって感じだ。



「…俺、部屋戻っていいか?」



そんな風に言って退散しようとする神城を柚子ちゃんがガシッと掴む。



「行っていいわけないでしょ! くるちゃんとのことで聞きたいこと沢山あるんだから」

「お前絶対めんどくせえもん!」



ぎゃーぎゃーと喧嘩し始めた。



面白い…。
< 29 / 92 >

この作品をシェア

pagetop