引っ越しの朝、我が家に迎えの車がやって来た。

「琴子、透哉さんの妻としてしっかりお務めを果たすのよ」

母に激励され、私は透哉さんがひとり暮らしをしているマンションに向かう。彼は少し急な仕事が入ったらしく、あちらで待ってくれているようだ。

左手の薬指には、先日彼から贈られたダイヤモンドの婚約指輪を着けた。

彼が住むマンションは都心部にありながらも、その喧騒からほどよく離れた一角にある。

優雅な佇まいのマンションは四階建てで、ワンフロアに一から二戸のゆとりある造りになっているようだ。地下には平置きの駐車場があるらしかった。

車寄せで降ろされた私は、エントランスでシンメトリーに配置された美術品の数々に出迎えられる。

高級ホテルのようなロビーラウンジを通過し、フロントでコンシェルジュに透哉さんの名前を告げるとエレベーターホールに案内された。

プライバシーを重視したエレベーターは、一基まるごと透哉さんの専用になっているらしい。