独占欲強めな御曹司は政略妻のすべてを奪いたい
真崎透哉さんは、私の中学生の頃の初恋の人だった。

久しぶりに彼の名前を耳にしただけで、想いを告げられないまま淡く消え去った恋心が甦ってくる。

彼には何度も会ったことがあり、私の父を介した知人という関係だった。

「あなたと透哉さんの結婚を機に、私のお兄さまの会社と透哉さんのお父さまの会社が業務提携するのも決まったの」

母は得意げに続けた。

「伯父さまの会社と透哉さんのお父さまの会社が?」

「ええ。あちらは私のお兄さまが受け継いだ、孝太郎さんの人脈がほしいそうなの」

孝太郎さんとは、私の父のことだ。

大学在学中に貿易会社を立ち上げ、一代で成功させた父は、業界で名の知れたカリスマ経営者だった。けれど十年前、私が中学生の頃に若くして病気でこの世を去ると、会社は事業承継がうまくいかず、みるみるうちに倒産してしまった。

そしてついに一年ほど前、母の兄である私の伯父が、父が築いた人脈を引き継いで新しく会社を設立したのだ。

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