「二百万円? それだけじゃあバッグひとつしか買えないわね」

封筒の中身を検めながら、母はがっかりした顔をした。

「お母さまっ……」

「まあ、今日のところはこれでいいわ。でも、そういうことならあなた、これからは自主的に私に仕送りをお願いね?」

母はまるで悪魔のように微笑んだ。

お金を渡してしまえば、母が私を金ヅルとしか見なくなるのはわかっていた。

けれどそうするほかなかった。

母が帰り、壁掛け時計を見ると、玲於奈さんのアトリエに向かう準備をしなければいけない時間だった。

私はこれからどうしたらいいのだろう。透哉さんに真実を告げ、相談に乗ってもらうべきだろうか。

「……そんなの無理よ」

私は誰もいないリビングでつぶやいた。

父が亡くなってから、私と母はふたりで生きてきた。なにがあってもたったひとりの大切な母だ。育ててもらった恩もある。透哉さんまで巻き込んで母を責め立てるなんてできなかった。

母の件は私ひとりでなんとかするしかない。