鬼畜執事のキング
とうとう

とうとう・・来ちゃったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

ずっと、ずっとココへ来たくて来たくてしかたなかった!!

じゃ~~~~~ん!!まさに!夢見る乙女の聖地!
〔執事喫茶「麗騎士」〕
いわゆる執喫~~~~!!!

きゃぁぁぁ~~

もうがんばったモンね私!
高校に入って、すぐバイトして!入会金貯めたモンねっ!
すごいよ私っ!えらいよ私!

私、鈴木美未香!16歳!!
中学の頃から、夢見てた。
ココを通るたび、キレイな男の人にエスコートされ、
優雅にお茶やケーキを食べてる女の人達を。
そして、憧れた。
いつか、私も、
そう思って、がんばってきた!
ううううぅぅぅ・・っ 感激で涙が溢れちゃうよっ!

「ちょっと、美未香!なにしてんの?入るよ?」
「えっ!」 あ!
歓喜わまってる私を余所目に、
隣で冷めた目をして、そう言い放つのは同じ学校のクラスメート・佐久間リカちゃん
リカちゃんは、前からココの常連で、(←お嬢なのだ!く~羨ましいっ

鳴れた足取りで、その夢の扉へと近づいていく。
その瞬間、スッと、扉が内側から開けられ、

「お帰りなさいませ。お嬢様♪」

と!と!と!
そう言って、数名のイケメン様たちが出迎えてくれてるしっ!!!!

き、きゃぁぁっぁぁぁぁ//////
そう叫びたくなるのを、マジでガチで押さえ込んでいると、
リカちゃんは、ふぅ・・とため息を1つついて、
「リク。」と、言った。
??
すると、イケメン様の中から、1人、これまた格上ランクの、ちょ~~~キレイな男の人が、りかちゃんの前まで来る。

そ、そして、そして!!
りかちゃんに対し、ニコッと微笑み
「りか様、こちらへ」と!エスコートしていくではないかぁぁぁぁ!!

これよこれよ!!これを私もしたいのよ~~~~

えっと、えっと
ソワソワしている私に、
イケメン様の先頭にたってらっしゃるイケメン様がっ(あぁっ///もうややこしいっ
「お嬢様は、初めてでいらっしゃいますよね?♪」と、優しく微笑みかける
いえ、微笑みかけられました///
そのお顔に仕草にポァ~としていると、
「あ・・の?お嬢様?」
ハッ!
し、しまった///つい、見とれてしまってた!!
えと、えとっ!
お金、入会手続き、学生証っ
わわっ///と焦っていると、背後から

「どんくせぇ」

へ?・・・

な、に?なにか・・? 
この夢のスペースに全く不釣合いなお言葉が降臨したような気がしたんですけど?
き、気のせい・・よねぇ・・?

「早くどけ、ば~か!」

は?!!!????
えっとぉ~・・聞き違いじゃぁありません・・よね?

すると、先ほどお声をかけてくださったイケメン様が、私の後ろに向って
「ソラ!そういう言葉は禁止!それと遅刻だぞ!」
と言った。
・・・あ、やっぱり、私の後ろに誰かいるんだ。しかも、遅刻って。。え?て事は、
後ろにいるのはここの夢の住人様っ・・?・・ぇ?
恐る恐る後ろを振り向く私。


その目に入ってきたものは・・

黒のエンジニアブーツ・・
腰パン・・そこから伸びるチェーンベルト・・
捲った袖からは、筋肉質のしなやかな腕
白いシャツから覗く鎖骨・・シルバー素材のフェザーのネックレス・・

淡いピンクの薄い唇
銀色のピアス・・金色の髪・・
そして、
今、見開かれる、
この・・ココのイメージとは全くあわない・・
鬼畜のような鋭い瞳・・っ!

お、・・「鬼っ・・」
ハッ!つい声に出してそう言ってた。

「あああ??殺すぞてめぇ!」
そう怒鳴り声をあげ、さらに瞳を吊り上げて私の事を睨んでくる、鬼畜男っ
ひぇぇぇえええっ!!!

ポカッ
「てぇっ!」
慄く私に、あのイケメン様が鬼畜男の頭を小突き、
「ソ~~~ラ!お嬢様に向って言うな!」そう付け足してくださった!
ウルッ(><)

「あ?こいつ客かよ、ちっ、じゃ来いよ!」
グィッ!  「へ??」
その鬼畜は私の腕を掴むと、どんどん奥へと歩いていく。
は??え??ちょっ・・え~~~~~????!!!

長い廊下の両脇にはいくつもの扉があって、そこを鬼畜はズンズン突き進んで行く。
そして、白い薔薇(造花だけど)が扉についてる部屋の前に立つと、
バタンと扉を開け、乱暴に腕を引っ張られた私は部屋の中へと入れられた。
(投げ込まれた?!)

「いったぁ・・」
腕をスリスリ擦りながら、その部屋を見渡すと、

「わぁ////っ!!!」 っ~~~~~~~~~~~~~//////
な、なにココっ!!なにコレっ!!!
部屋一面!
ピンクピンクフリフリ~~~~~~~~~っ
きゃぁぁぁぁ////かわいいっ♪♪♪かわいいっ♪♪

「気に入った?」
「え?」
な・・なんか、扉近くから声がしたんだけど、でも、今の声って鬼畜じゃあないよね?
だって、だって、今の声はっ!ちょ~優しいトーンで甘かったしぃ♪
そう思って、その声のした方を振り向くと、
「!!?」
バッ! すぐにまた向き直るっ!

え~~~~・・・と

もう一度、ゆっくり振りろうとして、
ガッツ!!!
「わぁっつ!!!」
頭を思いっきり鷲掴みされたっ!!
目の前には、やっぱりっ鬼畜の顔っ!
しかも、ちょ~おっかない目ぇしてる~~~っ!!
ひえぇぇぇぇぇっ!!!!

さ、さっきのお声の方は??居るなら早く出てきて、鬼畜を取り押さえてください~~

「なにキョドってんの?お前。」
ひっ! 更に顔を近づけてそう聞いてくる。
「あ、あの、他にも人が居るので、そのお言葉使いはやめたほうがいいじゃないんですか?」 がんばって言ったよっ!!私っ
それなのに、
「あ?ドコにいんだよ?」
「は・・?あの・・今、言葉をかけてくださった方・・」
「アレ、俺の声だから。」
・・・・・・・・・・

「あのぉ・・言ってるイミがよくわからないんですけどぉ・・・」
眼光に固まりながらも(メデューサかよっ)、そう聞くと、

「飲み物はどうされます?お嬢様♪」

いきなり、さっき聞いたあの甘い声が、眩暈しそうな微笑みを付けて、目の前にいる鬼畜の口から・・
出・・た・・
「て!!!っえぇぇぇぇっ???」
思いっきり叫ぶ私の声に鬼畜は耳を塞いで、一歩下がる。
「っせーねっ!」
「だっ、だっ、だってっ!!そっ、そ、そんなっ」
言葉にならないっ声を出し、私は鬼畜から10歩下がった!

「なに、その距離。」
あきらかに不機嫌な顔で聞かれる! 「うっ・・」

「ま、お前には使わねぇけど、この営業用は♪」
そう言って、口角を上げ、近づいてくる。
「ちっ近づかないで~~~~っ!!」思いっきり、両手を胸でバッテンし、身構える。
「は?俺の客だろ?なに言ってんだよ今更。」
「は?」 客?誰が?誰の?
大体、100歩下がって客だとしても、
ココは、あなたの方が客に仕えなきゃダメなんじゃないのですかっ??
コレって、ど~みても、私に仕えてないよね??!!
「俺の客になれるなんざ、奇跡だぜ、お前♪」
「は?」なになになに言ってんのこいつ???

たしかにっ!!ムカつくけど、目つき悪いけど、性格もちょ~最悪だけど、
鬼畜だけどぉ!
ムチャクチャイケメンだってーのは認めるよっ!!認めたくないケドね!!ホントはねっ!

だ・け・ど!!!
「私はあなたなんて指名してないですからっ!」 「?!」
「もっと、優しくて紳士な人が好きなんです!」 言ったぁぁぁぁ!!!
顔見てはさすがに言えなかったけどっ!ちゃんと言ったもんねっ!

「無理だね。」
「へ?」
「ココのシステム知んねぇのかよ、最初指名すると、3ヶ月間はチェンジできねぇんだ。」
は・・ぁぁっぁあぁっぁぁぁぁあ???

ハッ!そっか、私まだ、会員登録すら済んでなかったんだ!
し、知るわけないよぉ!!そんな事っ
「て、言うか!私、あなたを指名した覚えないんですけどっつ??」
開き直って、私がそう言うと、
「は・・ばか。」
と笑われた。 ムカッ////
「この部屋に入った時点で、指名確定なんだよ♪」
くくっとまた笑われたっ!!
なんですと~~~~~~~~~~????

「ちょっ、私帰る!3ヶ月たてば、それは解除されるんでしょっ、じゃ、その間、来ませんからっ!(あぁホントは来たいけどっ、こいつのせいで来れないじゃ~~んっ!!)」
そう叫び、扉に向おうとすると、
ガシッ!  「!!!」

「お前、いい度胸じゃん。殺すぞ?」
「-------!!!!!」 ひっ、
腕を捕まれ、壁に押し付けられっ
その目の前にはっ鬼の顔!!っ
ひゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~マジでこ、殺されるぅ~~~~っ
だっ、「誰かっ・・―――うっ!」
声を上げ、助けを呼ぼうとした瞬間、頬を強く捕まれて
く、口がうまく開かないっ!
「ぅおっ///」
その声がおかしかったのか鬼畜男お手は頬から離れ、
「変な声っ。ぷ・・。」 と笑う。
~~~~~~~~~~~~~///////な・に・を~~~~(怒)!!!
って、反論したかったけど、間近でこんな男の人を見るのは初めてで、しかもこんなキレ―な顔がなんてっ、くう・・腰に力が入らないっ//
なんでっ・・くやしっ////

そんな私を見て気付いたのか、
「もしかしてお前男の免疫無い訳?」 と言うではないかっつ!!!
「―――!!!////」くっ///
「え?マジで??」
ええ!そうですよ!!それが悪いか!
何も答えず、真っ赤な顔して俯いてると、
「少しは免疫つけたら?」
て!は??
「そんなのあんたに言われたくないし、あんたなんかの免疫だったらいらないし!」
途切れ途切れながらも、そう言うと、
「他の女の子達はそんな事言わないのに。」はぁ・・とため息をつく鬼畜。

「・・趣味悪・・」 

ハッ!!!つい、っ・・

「ふ~~・・ん」 
え??「そ、そのぉ・・あのぉ」 あぁぁぁ私のバカ~~~素直すぎるにも程があるって!!
グッ! 「ぇっ??!!」
「んっ///」 やっ、なんで???
また、壁へと押し倒された
う・・っ
スルッ・・ 「え」
鬼畜の手がスカートをまさぐってるっ//
「やっ・・//」
やっ、何してるの?やめっ
バッと体を思い切り横へ背くと、鬼畜は、さっさと私から離れていった。
「?」 な、なに??なんなの?
ふと、鬼畜の手を見ると、なにやら見覚えのあるチャームが・・
・・・・
「えっ??!!あ、なんで、私のスマホっ!」 そうその手にあるのは、紛れもない私のスマホ!! 
あ!さっき、スカートを弄ったのは、スマホを抜き取るためっ??
「ちょ。返して!!」 
取り返そうと手を伸ばしたが、鬼畜男は片手で軽がる私の頭を押さえてて、ソコからどんなにがんばっても前に進めやしないっ!
なんなのくやし~~~~っ!!
手の下でジタバタしてると、、顔認証の為か一度私の顔にスマホを近づけてから勝手に開いてなにやら打ち込んでる。
「ちょ、なにしてんの?」
少しして打ち終わったのか、やっと鬼畜は私を押さえつけてる手を緩めた。
「わっ!!」
いきなり、離されて、フローリングに転げ落ちた私。

「どんくせぇ。」 と、言い、スマホを投げてよこす鬼畜。
「わわっ」 焦って、それを受け取ると、スマホを開いた。
・・なにしたんだろ?

「俺のデータ打ち込んどいてやったからな。」
は?  ・・打ちこんどいて?やったから・・な?
な、どこまでも上から目線なのっ??!!!
「ていうか、なに勝手に入れてんの??!」慌てて、データを探すと、
1件の見慣れない名前があった。

≪空≫

そ・・ら・・
あ、さっき入口にいたイケメン様が、この鬼畜の事をたしか「ソラ」って・・
言ってた。
「そ・・ら?」
「ん?」  あ・・やっぱり。
・・・だけど・・こんな優しい・・顔も・・するんだ。
ドキンッ////  「--!!」
だぁっ!なにときめいてるのよ私っ!!違う違う、絶対にこいつは優しい顔なんてしないっつーか、持ち合わせてないって!!見間違いだよっ絶対!!
削除削除!! 指をせわしなく動かせ、削除しますのOKまで辿り着いたトコロで、
プチ 「え?」
え~~~~~~っつ??!!
ちゃっかり、私の指の間にソラの指がっ入り込んでてっ!
く、クリアボタン押されたし~~~~~~!!!!
「だから、!!なにすんの!」
「だ・か・ら、なんで、削除しよーとしてんの?」 反対に聞かれた!

「だっていらないもん!」
「1日1回、電話かメールよこせ。でないと、家まで押しかけんぞ♪」
人の話はスルーかよ!「は?なにソレ!それに家ってたって、知らな・・」
そう言いかけて固まった。
空の手にあるものを見て・・
バッ!ポケットに手をやる! 
無いっ!!
その手にあるもの。ソレは、私の学生証!!
登録に必要なものは全てスカートのポケットに入れていたから、たぶん
スマホを抜き取った時、一緒に獲ったんだろう。

空は私の学生証をヒラヒラとさせ、
「鈴木美未香。三条高校1年♪ね♪ふぅ~~ん」 と、言って二ヤッと笑う。
??なにその笑みは??!!
「返して!」
「登録済んだらな♪」
「は?」
「ココの登録まだなんだろ?なんも、システムわかってねーし、」
「あ・・」 ごもっとも・・
ていうか、登録すんの3ヶ月後にしようかなっ
あ!ソレいい!そうしよっ、そうすれば、こんな奴に・・
ピッ!
「え?」
「ん?今スキャンしたからな。もう登録済♪」そう言って空は備え付けの電話をいじくりまわしてる。
はぁつ??なにこの部屋はマジック部屋ですかぁぁぁ???!!!
「電話自体が複合機だから、楽でいい」
全然。私、無視ですかぁぁぁぁ??!!!
「あ?」
その気配に気付いたのか、やっと空は、私の方へ向きなおした。
そして、スマホの時と同じく学生証も投げてよこす。
私は犬かっ!
しかし・・はぁぁっぁぁぁあぁ~~~~~~~
登録されちゃったよ~~~~~~
つっとに、こんの鬼畜ヤロー
私の同意なんて、無し無しじゃん!!
がっくり肩を落とす私に、
「で?」と聞いてくる。
「は?」
「なんか飲む?」
「は?」 なんか、飲む?なんか飲む?
なんか飲むじゃなくて~~~~~
「ねぇ!」
「あ?」
「ココって・・執喫だよね?」
「なに今更。」 ふてぶてしい態度は変わらない。
質問のイミ絶対わかってないんだ!
「・・・普通、執喫って言ったら・・もっと違うよね?」
「・・こんなもんじゃね?」
は??
「いえ、違いますって!てか、全然違うし!なんか飲む?じゃなくて、もっとこう・・なんていうか、違うよねっ??!!」
精一杯、体で表現する私。
ちょい疲れたっ、ハァハァ

「なにを飲まれますか?お嬢様。」
「っ!!!/////」

そ、それは、いきなりで・・
立ちくらみする程の眩しい笑顔の空で・・、金色の髪がサラッと動いて・・
しなやかな指でメニュー表を差し出してくる。
ぽ~~~~~~~///////

その瞬間、
バン!  「たっ!」
メニュー表で頭をなぐられた!

「見とれてんじゃね~よ!」
だっ!あ!クソまた鬼畜編に戻ってるしっ!
それにしても、
「お嬢様の頭を殴る執事なんて聞いた事ないよ・・。」
頭を擦りながら、ぶつぶつ言うと、
「かもな♪だって、俺、他の客には営業使用だし♪」
な?
「じゃ、私にもそうしてよ!」
「は?無理。」
キィィィ~~~~~
「なんでよ??!!!」
わけわかんない~~客だぞ!私っ!
「・・営業用でいいの?」
「え?」
なんか、一瞬、空の表情が曇った。
でも、「・・・うん。」
私、お嬢様として、扱ってほしいもん。
この空間にやっと辿り着いたんだもん。
夢みたいよ・・

「・・ふ・・ん、じゃ、明日までに設定しなおしとくから、
今日はもう帰れ。」
「は?」
そう言った空は、私の声なんてもう聞こえないみたいで、ソファに寝転ぶと、そのまま目を瞑ってしまった。

な・ん・な・の・よっ!!
ホントにこの鬼畜はぁぁぁぁぁ!!
マジ自己中!マジワガママ!マジ最低~~~~~~~~~!!
「ふん!」
こんな部屋に居てもしょうがないと思った私は、直ちに、扉を開け、元歩いて来た廊下をズンズン早足で歩いていった。

出口付近で、
「いってらっしゃいませお嬢様♪」 
すぐにイケメン様たちが、見送りに来て下さり、名残惜しいがっ、その夢の空間を後にした。
「はぁぁあぁあぁ~~~~~~~~~~~」
途端、長いため息が出る。

今日は念願の執喫デビューだったのにっ・・
もっとウキウキな気分で帰るハズだったのにっ
あぁ・・コレもソレも、アレも、
すべてあいつ!鬼畜空のせいだぁぁぁぁ!!!!
く~~~~~~~~~~~~~
せっかく、バイトして、お金・・
え?

大事なコトに気がついた。
あ!私、お金払ってない!!!

えっ?でも、帰る時・・呼び止められもしなかったよ?
本当に登録済んだの?
ん、でも・・部屋に入った時点で、指名確定されたみたいだし。
・・それだけで、もう料金かかってるよね?なんで、すんなり出てこれたんだろ?

後ろを振り向いても、誰かが追いかけてくる気配もない・・

ん~~・・だけど、食い逃げ(あ、違う
入室逃げ?(変なの
だと言われるのヤだし、それに、そうなったら、りかちゃんにも迷惑かかっちゃうかもしれない・・
面倒だけど・・
回れ右をして、もう一度、お店に引き返そうとした。
その時、
~~~♪~~~♪
スカートから、着音が鳴った。
「?」
慌てて取り出すと、メールが届いてて、
送り主は・・!!!
≪空≫
は??なんで?
恐る恐る開くと、

【おい食い逃げ。今日は皆忙しいから、明日届けにこいよ。】
だった。
食い逃げって・・私と同じ発想じゃん・・・
はぁ・・そっか・・皆様、お忙しいのか。
ん??明日??明日また来いって事っ??
あ!お金だもんね。早く払っておきたいよなぁ・・
でも、また、明日くるのかぁ・・
はぁ、ホントだったら喜んでお伺いするところなのに・・
空が居ると思うと・・
・・・・・・ん?
別にいつも空がいるワケじゃぁないよね?
今日も遅刻とか言われてたし・・
そうだ。空の居ない時間帯を狙って、他の優しく紳士なイケメン様たちにお金を渡せばいいんじゃん♪
ふふふふ♪
やっぱ、私って頭イイ~~~♪サエてる~~♪♪

自画自賛をしながら私は家へと帰った。



次の日、登録金を確認してそれをカバンにしまうと、学校へ急いだ。

キョロキョロ。
「誰か探してんの?」
ぎょっ!
「!」振り向くと、ウチのクラスで、一番、いや、クラスだけじゃない学校一、秀才の
相馬くんが眼鏡を直し立っている。
うわ・・こーゆー頭のいい人ってニガテなんだよねぇ・・
「鈴木さん?」
「え?あっ、とああ、りかちゃんを・・」
私がそう答えると、
「・・佐久間さんなら、さっき、隣のクラスで見かけたよ。」
そう言って、少し口角をあげ、教室へと入っていく。
「・・ありがと。」
わ・・相馬くん、今もしかして笑った?
笑ったのかな?は、初めて見たよ!彼の笑顔!(や、笑顔と呼べれるかわかんないけど)

その後、りかちゃんが教室へ入ってきた。
「りかちゃ~ん」
「あ、美未香おは♪昨日どうだった?」
すぐにそう聞いてくれる。
「聞いて聞いてっ!!」 しがみつきながら、私がそう言うもんだから、
りかちゃんは、顔を引きつらせ、
「わかったわかった、じゃ、HR終わったら、更衣室に行こ。」
と言って、私の体を引き離す。あぅ・・

HRが終わると、すぐに、私とりかちゃんは更衣室に駆け込み、
昨日の話をした。

「空?」
「うん!!もうちょ~最悪!ちょ~俺様!信じられないあんな奴があそこの住人なんて!」
「じ、住人て・・」
「なんで、あんな奴があそこで働けるわけ?私が社長だったら、間違いなくクビよ!
ク・ビ!!」
「え・・っと、空ってそんなキャラじゃないハズだけど・・?」
「だ・か・ら!ソレは営業用なんだって!つまり猫かぶってんのよ!あいつ鬼畜のくせに!!」
「鬼畜・・て・・へぇ~でもなんか信じられないなぁ」
「りかちゃん騙されてんのよ!あいつの化けの皮に!」
私の興奮は治まらない。
ゼェゼェ

「まぁまぁ、落ち着いて。美未香」
宥められて、呼吸を整える私。
そして、言葉を続けるりかちゃん。
「・・空はね、あのお店で不動のNO.1なのよ。」
は??
「あの容姿でしょ?それに加えて、紳士だから、指名が絶えないんだけど」
へ???し、紳士??紳士って、今、言いました?あなた!?
「でも、指名は取らないのよ彼。」
「は?」
「だから、今回、美未香の指名を受けてくれたってのは、もうそれだけで、ちょ~奇跡なんだよ!」はぁ??奇跡??
・・あ、でも、あいつも言ってたっけ。そんな事・・

だけど、「そんなの全然嬉しくないし!ちょ~迷惑!」
ホントホント大迷惑!!!

「はぁ・・空ファンに聞かれたら、殺されそうなセリフだね」
りかちゃんにため息混じりでそう呟かれ、
「いくらでも、代わってあげるよ!とにかく、今日・・」
あっ!そうだ!大事なコト聞くの忘れてたっ!
「ねぇりかちゃん!!空のシフトってわかんない?」
「え?シフト?」
「うん!」
そう!今日は絶対にあんな奴の顔なんて見たくないから!
でも、あそこへお金払いに行かなきゃいけないから!
「んー・・じゃリクに聞いてみるか・・」
とそこで、
キンコン~~~♪カンコン~~~♪
始業のベルが・・
「あ、じゃ、リクにメールだけ送っておくよ。返信きたら、教える。」
「うんありがと♪」
そうして、2人して更衣室から出ると教室へ急いだ。


お昼休みになると、りかちゃんが、私の席に来て、
「リクから、返信きたよ~♪空の今日のシフトは5時からだって。」
「5時?」  んーと、今日は委員会も無いから、帰り支度しても4時には学校を出られそう・・
それから、あの店まで30分ぐらい・・
余裕で間に合うかもっ♪
「ありがと♪りかちゃん♪」
上機嫌で、お礼を言うと、2人してお弁当を広げ、食べ始めた。
あぁ♪食欲戻ってきたぁぁぁ!!

そうして、帰りのHRが終わると、私はダッシュで、校舎から出た!
今、4時ジャスト!
この歩くペースだと、もっと早くにお店に着けちゃうかもっ♪
ふふふふ♪ヨシッ!これで、あの鬼畜に会わなくてもいいぞっっ♪
あいつの悔しがる顔が目に浮かぶよ♪
ザマ~ミロ


「ザマ~ミロ」
・・・・・・・
へ・・・・?????

お店に着くなり、扉にもたれかかったその人物に・・そう
言われ  た・・っ!!・・・・・この眼光・・っ

「はぁぁぁ~~~~~????なんで?????」

それは、紛れも無いあの鬼畜で!!空で、いや、鬼畜空でっ?
あぁっ、もうどっちでもいいっ!!
とにかく空で!
「なんで!居るのっ!!今日は5時からじゃ・・」
ハッ!そこまで言って口を押さえた。
ヤバイ、空のシフト調べたなんて知れたら、しかも、それを知ってワザとずらして来たなんて知れたらっ!また何をされるかわかんない!!

「なんで?さぁ?何言ってんの?もしかして、俺、居ないと思ったの?」
「うっ!」
「まさかな~・・俺、指名しといて、ソレはねぇよなぁ、な?」
「えっ!あっ、はいそんな事はっ決してっ!!」
て!もう空ペースじゃんっ!!また、お嬢扱いされてないし~~~

「さっきの言葉。」
「へ?」
「美未香の顔がそういう顔してた。ザマ~ミロって♪」ニッ♪
「!!///」
こ、ココロん中、読めるんですかぁぁ??あなたっ!!
しかも、その笑顔はマズイでしょ~~~~~~~~~!!!
くそ~~~イケメン恐るべしっ!!笑顔だけで、悩殺されるとこだった!
くぅ!こんな奴にぃ!!殺されてたまるかっ////

「ふ・・じゃ、来いよ。」
そう言って左手を差し出してくる。

う!・・こ、・こういうトコは・・すごく紳士なんだけどな・・

あきらめのついた私は、渋々、(←この時点で、まだあきらめついてないんじゃ・・
その手をとる。
その瞬間、グッと手を引っ張られて、乱暴にお店の中へと連れ込まれた!!
「ひゃ」
そんな声を出している間に、空はどんどん、あの部屋へと進んで行く。
「えっ、ちょっ、あの、お金っ」
そんな私の声なんてまるで無視で、空はあの部屋に着くと、すぐに扉を開けて私を放り込む。
これで、放り込まれるの2回目・・
ちっ、なんで、もっと丁寧に扱えないかなぁ・・
一応女の子なんですけど私?

当の空は、ドカッとソファに座ると、
Yシャツの袖のボタンを留め始めてる。
ん? なに?着替え途中だった?それとも、今まで捲ってたのを降ろしたのかなぁ?・・
そんな仕草も、悔しいけど、すごく絵になる・・
私がジーッと見てると、
「変態。」
は??//// そう言われたっ!!
「な・・によ!お客さんの前に出る時はちゃんと完璧にして出るのが礼儀でしょ!」
ふふん♪もっともらしいお言葉を言ってやった♪
言い返せないでしょ~空っ♪さぁ私を崇めなさい~ホホホ~♪
「・・お前、客じゃねぇし、」
うんそうそう、お客じゃぁ無い・・っ
て!「はぁ??!!!!昨日、設定しなおすってゆったじゃん!!」
「あ~・・やっぱ、メンドイからやめた。」
「はぁぁぁぁっぁぁぁあ????!!!」なんなのソレ~~~っ!!

「ぶっ。ソレ、ヘン顔?それともリア顔?ぷぷぷっ」
そう言って、私の顔を見るなり、笑い出す空。
おい、こら!ちょっとちょっと!失礼なんじゃありませんっ???
そりゃぁねっ!あなたほどキレーな顔は持ち合わせてはいませんけどねっ!!
でもねっ!!
「どうせ、ブサイクですよ・・」
完璧ひねくれた!
空の座ってるソファの真向かいにあるチェアに背を向けるようにして、座り込むとだんまりを決め込む。

「美未香」 「・・・・」 「美ィ」 「・・・・」
「美未香ちゃ~ん」  「・・・・」
「金。」 「あっ!」う!しまった!声だしちゃった!!
「ふ・・」 くっ///また、空、笑ってるしっ
でも、今日ここに来た本来の目的はお金を払うことだし・・

私は、無言のままカバンをあさり、お金の入った封筒を取り出すと、
ソレを、後ろを向いたままの姿勢で腕だけを伸ばし、空の方へ突き出した。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
早く受け取ってよねっ!腕、疲れるし!
その時、
カサッ・・
封筒に触れた音がした。
次に、
グィッ  「---!!!っぇ?」
その腕を引っ張られた!
思わず、チェアから転がりそうになる。
が、その体をしっかり抱きしめ受け止めてくれた白い袖口の力強い腕・・っ
見上げると、ド!アップに恐ろしくキレイな顔っ!!///
じゃなくて、///空の顔っ!!
「えっ?」 なになに、状況が掴めませんが???私っ!!
下を向くと、お金の入った封筒がそのまま、私の手の中にあって、
?!え・・なんで、まだ受け取ってないわけ??
「空、あのっ」
そう言い掛け、見上げた途端・・止まってしまった。
空の瞳が・・いつもの鬼畜じゃなくて、すごく優しくて。
見とれちゃった・・
はっ!ダメダメそうじゃなくて////
「そ、空!お金お金!///支払うから早く取ってよ。」
「うん。支払って。」
え?なんか、今の言い方、いつもと違くない??空?
不思議には思ったけど、まずは・・
「はい。」手に持つ封筒を再度、空の目の位置まで持っていく。
すると、
「こんなのいらない。」
「は?え?だって、空、支払ってって・・」
「ん♪美未香の体で♪」
「はっ??!!」
「支払って♪」 チュ
「きゃぁぁ!!!////」 そう言った直後、軽くキスされたっ!!
なっ///
「なにすんのよっ!!ばか変態!!////」
力いっぱい抱きしめられてるから身動きとれない!が口は動く!
「は~~な~~せ~~~!!」

「ヤダ。・・また食い逃げする気?」
「はぁぁ??!!いや、だから、ココにお金持ってきてるんですけどぉ!」
「はぁ・・だから、そんなんいらないって。」
「~~~!!!」あぁぁぁ話にならん!!

そんなん言いあってる間も、だんだんと空は腕に力を込めてくる・・っ
う・・く、くるし

「美未香、俺のコト、好き?」
は??なんでこのタイミング?あ!このタイミングだから言うのか?
あう・・そんな経験ないからわかんないよぉぉぉ!!
「く・・苦しいから・・離して」
空の問いをスルーし、私がそう言うと、
「好きって言わなきゃ離さない♪」
と・・・・
こんのぉぉぉぉぉ!!!//////
ああ・・もぉ
「好き好き好きです!」 と、投げやりに答えた。
すると、
バッといきなり体を離す空。 
はぁぁ~~~良かった。窒息死するかと思った~~~
ん?
空を見ると、俯いてる。
「そ・・ら?」
顔を覗き込もうとして、グッ!「!!」
また抱きしめられてしまった!
「わっ!そ、空っ約束違うっ!」
「っせ!」
そう言ったあとしゃべんない・・
わけわかんない!
でも、さっきよりは抱き方が・・優しい。苦しくない。

なんか・・あったかい・・

サワッ・・ 「え」
なんか・・今・・太股辺りになにか・・
ツ・・ 「!!///」 う!!
えっ??空の手? え?私の太股・・触ってる??
「わっ!!ちょ、待った!ダメ!!空っ////」
焦る私に空は、
「好き・・なんだろ?」 と聞いてきやがる!!
がーーーーーーーーーーーーー!!は、はめられた!!
完璧。空のペースなんじゃないっ??
モロ、それに、はまっちゃってません?私!

「くすっ」
「え?//」
「ウソ。無理やりなんてしねぇよ。」そう言い、体をゆっくりと離してくれた。
・・?空・・
そうして、立ち上がると、ポットの置いてあるテーブルの方へ歩いていく。
めずらしく、飲み物を用意してくれてる・・この香りは・・アップルティーかな・・?
入れ終わると、 
「どうぞ」
と、テーブルまで、運んでくれた。

ど、どうしちゃったの??一体??
空、どこかに頭ぶつけちゃったんじゃないの??
あまりにもいつもと違ってたから、マジで心配してしまう。
「あの、空?」 「ん?」 
う・・///やっぱ違うっ そんな甘い顔初めて見たしっ!
まぁソレはそれでOKなんだけど・・
あぁいけないいけない!!///
「あ・あの、どうかしたの?もしかして頭とか打った?」
その質問がいけなかったのだろうか!!??
いきなり、
「あぁ??」 と片目を吊り上げ、あのいつもの空へ逆戻りしたぁぁ!!
「わぁぁっ!!」 もうなんなのよっ!こいつ~~~

「なんか、疲れた。」 いきなり、空はそう言ってソファにゴロンと寝転がる。
あのね・・
あきらかに疲れてんのは私の方なんですけど??
ぷぅとブゥたれた顔で空を見ると、
「くぅ・・」
「は?」
え??なに?ネタ?じゃなくて、寝た?客ほっぽって寝たんですか~~~っ???
「そ・・ら?」
ソロッと這いずって、空の側へ行く。
が、やっぱり・・
「くぅ・・」
寝てる・・・

はぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・
信じられない・・こいつ。
ジロッと空を睨んだ。
「う///」
く、悔しいコトに、寝顔もキレイなんだなっ!
睫なんて、私より長いんじゃない?
唇だってツヤツヤだし・・
!って、この唇に私・・キスされちゃったんだっけ////
なんか、今更ながらテレるっ!///
う、違うでしょ!ファーストキス奪われて怒るトコでしょ!ソコ!

あぁぁぁ・・なんか、自己嫌悪。

空はいらないって言ったケド・・そういう訳にはいかない。
寝ている間に、お金置いて帰ろう。
私は、お金の入った封筒をテーブルに置くと、空を起さないように静かに部屋を出た。
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