篠宮くんとふたりきりで、ヒミツのキス。



スマホを見ればいつもの起きる時間より少しだけ早い。

ドクドクと激しく跳ねる心臓を両手で押さえて、深い溜め息を吐いた。

どんな夢見てるのよ……これじゃ、キスされたがってるみたいじゃん。


思い出すだけで顔が火がついたみたいに熱くなって、ベッドの上でごろごろ転がる。


「……願望とか、言わないよね?」


そうだったらマジで恥ずかしい。

まさに煩悩の塊。

穴に入って上から土を被せてもらって、永久に埋まっていたいくらい、恥ずかしさでどうにかなりそう。


……篠宮くんに“天音”って呼ばれて、好きでたまらないって言う熱っぽい目で見られて、何の口実もなくキスする夢。


「いくら夢でもそんなの耐えられない……!!」


必死にかき消そうとしても、夢の光景は脳裏に深く刻まれて忘れられなかった。

普段は夢の内容なんか覚えてないくせに。


これが現実だったら、幸せだったんだろうな。



< 22 / 180 >

この作品をシェア

pagetop