この恋は狂暴です
――――― で・・・今に至る。


「つ――かっ!!マジ、ムカつく!!!!」
「ははっ、薫にしてはめずらしくハイテンションだな」
「だ―――――っ!!桃弥はくやしくねぇのかよっ!あんだけコケにされてっ!」

「・・俺は、昔から姫の事知ってっから。 あーゆー言い方も慣れてるし」

「は?―――――っつ!」

俺から見ても桃弥はなかなかのイケメンで、俺とはタイプが違うけど、背も俺と同じくらい高いから二人して歩くとかなり目立つ。
けっこう告白もされてるみたいだし 
・・それに
俺と違って桃弥は優しい。
こんないい奴が、なんで
なんで

「なんであんなワケわかんねぇ女に惚れたんだっ?!」
つい言葉に出てしまった。

「なんで?って、うー・・ん
姫は中学時代から皆のあこがれだったし、あの顔であの口調だからおもしろいだろ?」

う、う――・・ん ・ ・たしかにあの顔(で)は反則だよな。

「俺ら全員の姫だったんだ乃野は。だれが抜け駆けするのも許されないくらい」

「・・・」

「だけど高校に入れば、中学とは違う。もう姫も、俺たちも自由になる。
はぁ―――――でもさ、そうは言っても、なかなか踏み出せないもんでな
自分の気持ちを伝えるのに又、1年もかかっちまった。ははっ・・」

「・・桃弥」

「でも、今日やっと俺の気持ちを姫に言えたしっ!」
そう言ってニカッと笑う桃弥。

「伝えるだけで良かったのか?桃弥」

「・・ああ。それにOKがもらえるなんて思ってなかったし」

「っえ?!」
桃弥の表情が曇る。  (なんだよっ?それっ!)
「そんなのわかんねぇだろ!」

「俺さ、実は確かめたかった・・ーってのもあって」
 
「は?」 意味が・・

「中学の仲間からの情報で・・」

え?
なに?

「あの姫に付き合ってる男がいるっていう・・ウワサが流れてるって」


「へ?」


「それも確かめたかった。 今まで誰のものにもならなかった姫に、マジでそんな男が居るのかって、っつ!」
拳を握りしめて顔を歪めていく桃弥。


「・・で。わかったのかよ
桃弥が4年間の想いと引き換えにまでして聞き出した答えってーのは」

桃弥は、俺の言葉に 「いいや。・・何も」 と静かに首を横に振った。

さっきまで、なんともない顔して笑っていたのに
本当はスゲー辛かったんだと実感させられる
「桃弥・・」

「ははっ悪ィ薫、俺帰るわ。 やっぱ正直、かなりダメージくらってるみたい(笑)」

「桃弥・・」
「今日はセッティング、サンキュな。」

「・・」

俺はそれ以上、何も言えなかった

・・何も言葉が見つからなかった。
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