聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
聖女ではなく大魔女として次期国王陛下にお会いします
 落ち着かない。どうしたって落ち着かない。

 シャルロッテは居心地の悪さを顔にも態度にも隠さず、前を行く相手についていく。

 前回は気づけば城に運ばれ部屋で寝かされていたが、せっかくファートゥム城へ堂々と乗り込むのだ。

 どうせなら派手に登場して存在を印象づけようと、城門前で警護していたエーデルシュタインの団員の前にシャルロッテとヘレパンツァーは前触れもなく現れた。

 突風が起こったのと同時に突如姿を見せた怪しい二人組に、若い青年の団員は目を剥いて条件反射で剣を抜いた。

 一方、年配の団員はグリップに手を掛け警戒心を露わに容赦のない目で魔女と悪魔を睨めつける。

「貴様、何者だ!?」

 歓迎されていない不信感溢れる声と眼差しに、シャルロッテは心を躍らせた。

 大魔女に向けられるものとしては、まずまずかしら。ここで名乗って王家に仇をなす者だと堂々と宣言しておけば、ゆくゆくは……。

「やぁ、シャーリー! 約束通り来てくれたんだね」

 計画という名の妄想を繰り広げていると、不意に声をかけられる。

 今の一触即発の雰囲気に相応しくない穏やかな口調だが、号令でも聞いたかのようにその場にいる団員たちは気を引き締めて姿勢を正す。 
 
 城内からゆっくりとこちらに歩み寄ってくる男性は、フィオン・ロヤリテート。見た目は爽やかな好青年だが剣の腕は確かで、王家直属のエーデルシュタイン騎士団の第一分団長を務めている。

 いわばシャルロッテとは敵対関係にあたる……はずだ。
< 103 / 162 >

この作品をシェア

pagetop