聖女の汚名返上いたします!私は悪徳大魔女ですが?
 元々爵位をもっていたのはシャルロッテの父、ロベールだ。三年前に母が亡くなり、後妻となったペネロペは野心家で、意地でも娘のクローディアを王家に嫁がせたいと目論んでいる。

 おそらく父と結婚したのも公爵夫人という立場を欲したからだ。

 そんなロベールがつい最近、病で亡くなった。元々忙しく不在がちだったため、この家ではペネロペが顔をきかせていたが、ロベールの死後にその勢いに拍車がかかったのはいうまでもない。

 未亡人として周りに哀れみの目を向けられながら、実質的に家長となったペネロペはますます実の娘であるクローディアと血の繋がらないシャルロッテを差別して扱った。

 結婚した当初から、義母も異母姉も自分を好いてはいなかった。もちろんシャルロッテ自身も彼女たちと仲良くするつもりは毛頭なかったので、利害は一致し互いに距離を取って……とはいかないのが世知辛い。

 クローディアより年下とはいえシャルロッテも公爵家の娘。そして、ロベールは血のつながったシャルロッテを当然のように可愛がり、愛していた。

 それがペネロペもクローディアも気に入らなかった。いずれ王家との妃か側室候補の話が舞い込んだとき、もしかするとクローディアではなくシャルロッテの方が優先されるのではないか。

 この家で正式に公爵家の血をついでいるのはシャルロッテだけになる。

 父が亡くなり喪に服している今、家の中でペネロペやクローディアの理不尽な言いがかりが日に日に激しさを増していく。

 今回はどこに落としどころを持っていく気なのか。じっと目の前のふたりと観察していると、クローディアが、一枚の紙をペネロペに差し出した。
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