トライアングル 下
【第10章】 起死回生

「しかし暇ですね〜。」
宇宙人の一人がつぶやく。
「おお〜!騒ぎになっておる、騒ぎになっておる。」
女神は高台にある自分専用のパソコンのような機械で
地球の情報を調べていた。
パソコンの画面には"YAHOO!"の掲示板に女神のテレパシーに関しての憶測の書き込みが溢れていた。

女神がテレパシーで人類に訴えてから時間は30分も満たない。
が、その持て余した時間に宇宙船内でも盛り上がる者、
静かに過ごす者、仕事に打ち込む者。
様々に別れていた。
「女神様。地球人になぜ2時間も猶予を与えたのですか?」
暇な宇宙人が女神に問う。
パソコンの掲示板に食い入るように「いいぞ!」とか
「そうじゃないだろう!」とか楽しそうに盛り上がっている女神が画面を見つめたまま、軽い感じで問に答える。
「2時間という時間は長いようで短い。」
「この掲示板でもそうなように、憶測や推測で盛り上がるにはいい時間。」
「しかし、この2時間の間にどこまで逃げれる?どう攻めて来れる?」
2時間という時間。曖昧なテレパシーのメッセージ。
このメッセージの信憑性を確認して、状況を整理して、
部隊を整えて、攻め入る。
逃げるにしても対策を練るには短すぎる時間。
「どうせ何も出来ぬ。ただただ足掻く姿を見るのは面白いではないか。」
その女神が見せる笑顔は味方の宇宙人でもゾッとする。
その反面、味方でいて心強いと確信し心から漏れるように
「、、、おお!」と、小さな声が出る。
「この掲示板が2時間後。情報を確信した瞬間。絶望と恐怖に変わると思うと楽しいではないか。」
侵略にあたって地球を調べ尽くしていた女神にとって
亮輔達の行動、メッセージの反応、地球人の考え方や行動まで全て掌の内。
全ては思いのまま。その中でも人を追い詰め、苦しむ姿を
ひたすらに楽しむ。残忍極まりない女神。
「おおおお!」そんな女神へ男たちの地鳴りのような声、
「さすが女神様!!」
船内は歓喜で湧く。
そんな中、「ん!?」と、一人の宇宙人の機械がレーダーに物体を捉える。
「女神様!レーダーに反応が!1機ですが飛行物体がこちらに向かってきております。」
宇宙船を中心に円状に巡らされた緑のレーダーに
小さな赤い点が映り、徐々に近づいて来ているのが分かる。
「おおおお!」という歓喜の輪の中、中心で盛り上がっていた女神が「フン!」と、バカにするように鼻息を漏らし、
「1機なら調査機という所であろう。」
「まぁ、まだ情報を流されるには早いのう。」
上から目線の高飛車な物言いで一言放った。
「消してしまえ。」



「ちょっと待てよ、、、。このレバーが上昇で、
これが旋回、、、。」 
この女神の宇宙船に近づく戦闘機。その中には亮輔。
そして、祐介が乗り込んでいた。
探り探り戦闘機の運転をする亮輔。
「亮輔!はよせんか!」
後ろから祐介がチャチャを入れる。
「うるせ〜な!ゲームで感覚は分かっても、操縦自体は初めてなんだよ!!」
フラフラと左右にぎこちなく揺れながら徐々に宇宙船に向け進んでいく戦闘機。
そこへ存在を嗅ぎつけた女神の軍の飛行機が5機向かってくる。
「おい!来たぞ!来たぞ!はよ!はよ!」
戦闘機内がまだ慣れない操縦の中、ワチャワチャと騒ぎ出す。

5機編成で飛んでくる。
そのうちの1機の射程に2人の乗った戦闘機が入る。
飛行機内の計器の緑の照準が探るように周りを徘徊し、
「見つけた!」とでも言うかのようにピタッと合い、
ピピピ!という音と共に照準が赤く変化する。
「発射!!」

ピープーピープー
警報音と共に亮輔の戦闘機のレーダーに"DENGER!"という
文字が点灯する。
「おい!亮輔!ミサイル来とる!ミサイル来とる!!」
慌てる祐介。
視界には発射されたミサイルが近づいてくるのが一目瞭然で分かる。
「分かってる!!」
亮輔は「これがミサイル、、、これがライフル、、、」
などとブツブツ言いながら戦闘機の文字盤を確認している。
「よし!」
亮輔が操縦桿を思い切り手前に引き、右に大きく回す。
それと連動して戦闘機がお腹を見せるように上昇、
右に旋回する。
「うおっ!!」
祐介の身体が上昇から発生する"G"により急に重くなったかと思うと視界が上下逆転。
上には地上が見える。
上昇しながら旋回で、上下左右、もう何がなんだから分からない。
しかし、未だピープーピープー!警報音は止まらない。

ミサイルは逃げるように上昇した2人の戦闘機を追うように軌道を変化して追尾する。

ピピピピ!
徐々に警報音の間隔が短くなる。
明らかにミサイルはすぐ側まで迫ってきている。
「あかん!あかん!」
祐介が座席をユサユサ揺らしながら、いても立ってもいられない感じで騒ぐ。
「大丈夫だ!大丈夫!」
亮輔が上下左右に機体を振りながらミサイルから逃げる。
ピーーーーッ!
しかし無情にも警報音は間隔が一つになり大きく鳴り響いた。
「あーーーーー!」
祐介のその声と共に
ドーーーーン!
ミサイルは戦闘機に直撃した。





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