トライアングル 下
「梨緒!」
入り口に寄りかかりうつむいたまま梨緒の元に亮輔が駆け寄る。
「梨緒!大丈夫だった?」
「怪我の具合はどう?」
「少しフラつくの?」
興奮から雪崩のように溢れる言葉。
「、、、。」
しかし梨緒からの返答は一切ない。
うつむいた前髪に隠れて表情がよく見えない。
「、、、どうしたの?」
隠れた表情をのぞ仕込むように優しく確認する。
首をかしげながら前髪の下の視線の先に顔を潜り込ませる。
「!!」
その表情は今までに見たことがない表情だった。
今まで笑顔で支えてくれた梨緒。
無邪気に喜んでくれた梨緒。
その笑顔で迎えてくれると思っていたのに、、、
あの猫のような笑顔はそこにはなかった。

パーン!
表情を確認したと同時に襲った梨緒からのおおきいビンタ。
はっきりと亮輔に見せるその表情は完全に"怒り"だった。
「何をしてるの!!」

「!!?」
急な事に亮輔は対応しきれない。
頬を抑え、痛みよりも置かれた状況に分けもわからず
思考が停止し、呆気に取られた表情で
梨緒を見つめ返す。

「こんなめちゃくちゃにして!!」
「、、、祐介まで、、、!!」
眉をハの字に下げながらも強く、訴えかけるように、
拳を握り、両腕をブンブン振りながら
梨緒が言い放つ。
「頭のいいあなたが気付かなかったの!!?」

「!??」
亮輔はいまだ状況が理解出来ない。
頬を抑えたまま言葉も出ず。
「、、、。」
首を横にだけ振った。

「ちょっと来て!!」
そんな亮輔の頬を抑えた腕を強引に掴み、
引っ張るように2人は入口から出ていった。
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