今は秘書の時間ではありません

1ヶ月の猶予

4人で社長室へ戻った。

私は通常業務に戻るべくメールチェックをする。
この業務が必要なのかはさておき秘書としてはやるべきこと。

一通りチェックし、必要なものを振り分けた。

スケジュールを確認し、本日の予定からお伝えした。

今日は午後からの会議のみで外出予定はない。

「友永さん、座って。これからの方向性について話すから。」
社長に言われ応接セットへ腰掛けた。
室長、橋本さんも腰掛ける。

「まず、リゾートホテルだがうまく行く見込みはない。建てたとしても集客も見込めないし、そもそも地元からの反発が目に見えている。」

「そうだな。周りに観光地もレジャー施設もない。」

「かといってホテル自体を魅力的なものにするような案もない。ただ、建てるだけだ。」

「建てたことで利益があるのはゼネコンだけだな。建てたい奴らと建てさせてやる立場の専務一派が甘い汁吸うだけだ。」

「俺はちょっと考えたんだけど温泉旅館にするのはどうだ?季節ごとにイベントをやって風情を楽しんでもらうって言うのは?日本人でも地域色を出したら始めての経験になる。海外の客は日本を楽しみたいんだ。花火ひとつとっても不思議らしい。」

「なるほど…。温泉旅館なら高層にならないな。地域住民には温泉開放する日を作れば受け入れやすくなるかもしれないし。」

「あのあたりは海も山も近くないから長期休暇の時期は子供向けのアクティビティを用意したらどうだろう。親は休みくらいゆっくりしたいが子供のために旅行に連れてくるだろ。旅行の間1日くらいはゆっくりマッサージでもできたら親子ともにハッピーだよな。」

「ただ、高層でなくなると部屋数が減る分単価を上げていかないと元が取れないぞ。」

「そこだな。料理をある程度のものにしてわざとワンランク上を売るか?それともファミリー層や外国人を長期滞在させる方向にするか。」

「悩みどころだな。海とかがない分落ち着いたシニア世代をあえて取り込める気もする。」

「季節ごとのイベントはいいと思うんだよな。毎年変えてやることで飽きさせない工夫をしたら何度来ても楽しめるって言ってもらえるかもしれない。」

3人の話はとても興味深い。
どの意見も一長一短だわ。
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