どうにもこうにも~出会い編~
途中の大きなカーブで彼の身体がぐっと私の背中に触れる。男の人と身体が触れるような状況に出くわしたことがないので思わず身が固くなる。

「あ」

 彼は短い小さな悲鳴のようなものを上げた。

 「どうかしたんですか?」

 「いえ、なんでもありません。石原さん、苦しくありませんか」

 「く、苦しくないですよ」

 身体がかっかと燃えるように熱い。彼に悟られまいと身を縮こまらせてひたすら下を向いていた。
 ようやく目的地の駅に着いた。

 「西島さん、ありがとうございました」
 
 「いやいや、むしろ怖い思いをさせてしまったんじゃないかと思って。手荒なことをしてすみませんでした。というか、痴漢を警察に引き渡すべきでしたね…」

 「西島さんは私のこと守ってくれたじゃないですか。謝らないでください。別に警察に引き渡さなくていいですよ。めんどくさいですし。それより西島さん、もう何週間もお店に顔出してないじゃないですか。心配してましたよ」
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