月城家に居候を初めて数日が経った。

 朝は小夜が、帰りは朔夜と小夜の二人で送り迎えしてくれているから今のところなにも起こっていない。

 ありがたいことなのかもしれないが、突然送迎されることになって紅は正直戸惑っていた。

 送迎されて登校すると、紅より早く教室に着いていたエリカが訝しげな顔で尋ねた。

「ねえ、紅。最近月城先輩と一緒にいるの見るけど、仲良くなったの?」

「え? う、うん……ちょっと話したりするようになったんだ」

「気をつけたほうがいいと思うよ。あの先輩いろんな噂があるから」

「噂?」

 エリカはヒソヒソと小声で耳打ちした。

「不気味な家に住んでるとか、家に妙な連中が出入りしてるとか、あんまりいい噂を聞かないの。ほら、ちょっと怖そうだし、実はヤバイ連中と関わってたりとか────」

 そんな噂があったとは知らなかった。なにせ自分は今までほとんど朔夜達と関わることがなかったのだ。

 だが、確かにエリカのいう通りかもしれない。不気味は家かどうかはともかくとして、自分のことを吸血鬼なんて言っているし、小夜も、観月達も同じ吸血鬼なんて妙だ。

 最初は大掛かりなドッキリでも仕掛けられているのかもしれないと思ったが、それは違った。

 エリカもこう言っているし、やはり彼らには近づかないほうがいいのだろうか。

 だが、両親のことや真紅の血族のことを知りたい気持ちはある。疑う気持ちは消し切れていないが、まだ彼らから離れるには尚早だと思った。

「そう言えば最近雨月先輩とも一緒にいるところも見るけど、サッカー部にでも入ったの? あの二人確かサッカー部だったよね?」

「そういうんじゃないよ」

「だって、急に関わり始めたからびっくりするじゃない。マドンナの雨月先輩はともかく、月城先輩もなんて────」

「えーと、ちょっと気が合っていろいろ話すようになったんだ。だからそんなに心配しなくても平気だよ」

「だって、最近付き合い悪いしあんまり遊んでないでしょ? 心配なのよ。まさか月城先輩に脅されてるとかじゃないよね?」

「ごめんね、ちょっと家のことでバタバタしてたの。けど、大丈夫だよ。朔夜さん、ああ見えてそんなに怖い人じゃなかったから」

「朔夜さん? いつの間にそんなに仲良くなったの?」

「え、いや────」

 エリカから見て朔夜の印象はあまり良くないらしい。だが、紅は彼を他の吸血鬼のように怖いと思ったことは一度もなかった。

 それは吸血鬼だ、という話を聞いた後もそうだ。どちらかといえば思慮深くて感情を表に出さないようにしているように見えた。

 未だに、彼らが吸血鬼だという話を信じているわけではなかったが、嘘をついているとも言えない。

 取り敢えず、唯一まともそうなイメージの小夜が言うからには本当である────と薄皮一枚くらいの信頼だった。