紅が月城家に居候を始めて一週間が経とうとしていた。

 相変わらず小夜と朔夜の送り迎え、そして分家の面々に監視される毎日が続いているが、未だに何も起こらない。

 それはそれでいいことなのだが、やはり吸血鬼の話なんて嘘だったのではないかと紅は疑っていた。

 彼らは優しいし、別に迷惑ではない。エリカには少し驚かれたが、それで不具合があるわけでもない。

 当初抱いていた小夜や朔夜への不信感は少しずつ消えているが、非現実的なことなので簡単には信じられなかった。

「吸血鬼、か……」

 不安や不信感は疑問から生じるものだ。なら調べてみれば、わかるだろうか。

 思い立ってすぐ、紅は図書室へ向かった。

 学校の図書室の情報量なんてたかだか知れているが、それでも吸血鬼について知りたかった。

 有明高校の図書室へ入ったことは入学して以来一度もない。教室より少し広い部屋には、背の高い本棚がずらりと並べられていた。

 紅はその中から歴史のコーナーを探し、本棚を一冊一冊探した。

 学校の本棚になんてないかもしれない。だが眺めていると、その中に一冊の本を見つけた。

「ドラキュラ伯爵」と書かれた本だ。やはり、こういった少し子供向けのものが多いのだろうか。

 中を開いて軽く流し見すると、それはおとぎ話のドラキュラ伯爵についての話だった。内容は、夜な夜な町に現れ少女を襲うドラキュラ伯爵が町の少女に恋をするという内容のようだ。

 吸血鬼の真偽を確かめるために本を探していたわけだが、どうやらこれには書かれていなさそうだ。

「本自体は面白そうだけど……仕方ないかな」

 紅は本を戻し、また別の本を探し始めた。

 吸血鬼のことは小夜と朔夜に聴いた範囲内でしか知らない。あとはせいぜいニンニクや十字架が苦手ということくらいだ。

 こんなことをわざわざ調べるのも、全ては両親の手掛かりを探すためだ。

 両親の失踪は赤ん坊の時だったから、なにも覚えていない。だが、確実に吸血鬼と絡んでいるはずだ。

「見つけた、ここにいたのね」

「わ……っ! あ、小夜さん……」

 突然声がして紅は驚いた。図書室の入り口に小夜が立っていた。

 口振りから察するに探していたのだろうか。小夜は紅の方に歩み寄るとその前にある本棚をちらりと眺めた。

「なにか探し物?」

「はい……ちょっと、吸血鬼のことを知りたくて……」

「えっ、それならこんな所で調べなくても教えるのに……」

「え……教えてくださるんですか?」

「あなたは知る必要があるもの。どうせ部活が終わったあと朔夜君の家に行くから説明するね」

「あ、ありがとうございます……それで、小夜さんは私を探してたんですか?」

「ええ、ホームルームが終わったから一緒に部活に行こうと思ったんだけどいなかったから」

「よくここが分かりましたね」

「あなたの香りは目立つのよ」

「そ、そうですか……じゃあ、行きましょう」

 てっきり教えてもらえないと思っていたが、小夜は意外にも寛容だった。