それから何日かして、わたしは仕事終わりの篠原くんを呼び出した。

「篠原くん!」

「悪い、秋山!遅くなった」

「ううん、大丈夫。急に呼び出してごめんね」

「いや、大丈夫だよ」

 篠原くんは優しい口調だった。
 
「あのね、ちょっと話したいことがあるの」

「話? なんだ、てっきりデートのお誘いかと思ったよ」

「ち、違うからっ!」

 わたしはその問いかけに慌てて否定した。

「そんな否定しなくてもいいだろ?俺、ちょっとだけショックだわ」

「えっ!? ご、ごめん!そんなつもりはなかったんだけど!」

「冗談だよ。 で、話って何?」

 なんだ、冗談か……。てっきり本気かと思った。

「あ、あのね、篠原くん」

「ん?」

「あのね、ぷ、プロポーズのことなんだけど……」

 わたしは緊張しながらも、口を開いた。

「うん」

「もし結婚するならね? その、わたしから条件があるの」

「条件?」

「うん。……あのね、もし結婚するなら、わたし今の仕事を続けたいの。今の立場を失うのもやだし、今のお店からなるべくなら異動したくない」