エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
不埒な純愛

 意識を失ってた間、私は夢を見ていたようだった。

 その夢というのは、私が小学一年生の頃、同級生であり同じマンションに住んでいた幼馴染みでもあった男の子、“優《ゆう》くん”と、当時人気だったテレビドラマの話をしていた時の懐かしい光景だ。

 その主人公というのが、神の手を持つと巷でもてはやされているような天才外科医で。

 手術が不可能だといわれているような難易度の高いオペを次々に成功させて、多くの患者の命を救うという、大人向けの医療系ドラマだった。

 その幼馴染みの優くんのお父さんが外科医だったことで、

『将来はお父さんのような外科医になるんだ』

というのが優くんの夢であり口癖だったことから、私も自然と外科医に憧れるようになっていた。

 けれど、ある朝、登校児童を迎えにきていた送迎用のバスに乗り込んでいた際に、高齢者が運転する車がそこに突っ込んでくるという、いたましい事故に巻き込まれ、その夢は儚くも砕け散ることになる。

 その時に、ちょうど優くんの後ろにいた私は、正面から向かってくる車に気づいていたらしい優くんの『鈴ちゃんッ!』という叫び声を耳にしたと同時。

 背後の私に向かって突進してくるようにぶつかってきた優のお陰で、運良く、背後に位置する植栽の上へと倒れ込んだことにより、ほんのかすり傷程度で済んだ。

 けれども、何が起こったか状況が把握できずにいた私は、その場で泣きじゃくることしかできずにいた。
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