「ちょっと、窪塚、どういうつもりよッ!」

「んあ? どういうつもりもなにも、あー言っとけばさぁ。親戚である院長と愛人なんて妙な噂もなくなるだろうし。お前に言い寄ってくる輩も居なくなるだろうし。お前にとっては、一石二鳥で、願ったり叶ったりじゃん。ついでに俺に寄ってくる女も居なくなるだろうしなぁ」

 何が、私にとっては、一石二鳥で、願ったり叶ったりよ!

 自分のメリットしか考えてないクセに!

 まぁ、でも、確かに。擦り寄ってくる輩が居なくなってくれるのは、非常に嬉しいことではあるけど……て、ちょっと待って。

 ーー今、親戚である院長って言わなかった?

 そ、そういえば、おじさんがバラした時も、知ってたような口ぶりだったような気がしないでもないけど。あれ? どうだっけ?

「ちょっと、窪塚。あんたなんで私と院長が親戚だって知ってんのよ?」

「んあ? なんでって。この前、お前が自分で言ってたんじゃねーかよ。あっ、もしかして覚えてねーの?」

「ーー!?!?」

 つい先ほど、このクズ男のお陰で、追手から逃れるようにして、更衣室の目と鼻の先にある男女それぞれの職員専用ラウンジの前を競歩並みの速度で足早に通り過ぎた私たちは、仮眠室へと足を踏み入れたところだ。

 そうして部屋に入るなり、壁際に置かれているシングルベッドの上へとスプリングを軋ませながら寝転んで自室のように寛いでいる窪塚のことを腰に手を当て仁王立ちした体勢で厳しく追及している真っ最中。

 窪塚の口から飛び出してきた思いがけない言葉に突き当たり、只今私は困惑中である。

 確かに、あの夜のことを何度思い返してみても、窪塚と致してしまった記憶も途中からのものばかりだ。

 それ以外にも、諸々気にかかることがあるのだが、そういう肝心な場面も含めて、それ以前の記憶もまったくといっていいほど残ってはいない。

 どうやら、あの夜、仕事と勉強とに忙殺される専攻医ならではの多忙を極める日頃の疲れが祟ったせいか、相当酔っていたらしい私は、窪塚と《《ただ》》致してしまった《《だけ》》ではなかったらしい。