エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 あの後、このクズ男は、公衆の面前でいきなりキスされて、ショックのあまり、フリーズ状態に陥ってた私のことを胸に抱き寄せたままの体勢で、わーわーと騒いでいた先輩医師に向けて。

「というわけで、ただの痴話喧嘩でした。いくら当直明けで妙なテンションだったとはいえ、職場で、しかも仕事中の皆さんの目前で、お騒がせしてしまい、どうもすみませんでした」

 なんて殊勝なこと言って謝ってはいたが、まったく悪びれない様子で申し訳程度に軽くちょこんと頭を下げて去り際に、顔だけ振り返り。

「あっ、念のために言っときますけど。コイツ、俺のなんで。もう二度とコイツに言い寄ったりしないでください。すっごい迷惑なんで。じゃあ、お先に失礼します」

 あたかも先輩方に牽制でもするかのように、なんとも軽快な口調で平然と、とんでもないことを捨て台詞の如く言い放ったのだ。
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