エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
『そっかそっか、そういうことか。いつかそうなるんじゃないかとは思ってたけど、やっぱりねぇ。鈴《りん》のことだから、今までずっと窪塚のこと毛嫌いしてたから、言い出しにくかったんでしょ?』
『――へ? 否、別にそういう訳じゃ』
『もう、照れなくていいから。でも、良かったね。これでやっと院長の愛人なんていう変な噂たてられなくて済むし』
『……う、うん。まぁね』
えらくあっさりと納得してしまっている彩の態度と、心外な言葉に、思わず言い返そうとするも、彩に取り合ってもらえず終いで。
ーーおじさんといい、彩といい、ふたりして何なの?
『仲がいい同期』とか、『いつかこうなると思ってた』とか、好き勝手言っちゃって。理解に苦しむんですけど。
自分から嘘をつかなくて済んだのは良かったけれど、朝からなんだか釈然としないものを感じてしまう羽目になった。
因みに、彩は、身長が私より五センチ高い百六十五センチで、ショートカットのよく似合う、くりっとした円な瞳とぷるんとした唇が魅力的なスレンダー美人だ。
先ほどのやりとりからも察していただけただろうが、竹を割ったようなサバサバとした性格で、気の強い私と同等の気の強さの持ち主でもある。
そのせいもあり、出逢った当初はよく衝突することもあったが、話してみると不思議と気が合い、今では、仕事もプライベートもなんでも言い合える、気の置けない親友だ。
だから、おじさんと私の関係性も伝えてあった。
実は、院長であるおじさんの息子である長男(脳神経外科医・三十ニ歳)、樹《いつき》先生のご自慢の彼女だったりする。
気の強さは似ていても、つい最近まで処女だった、女子力の乏しい私とはえらい違いだ。