エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 それから、これも言い訳になってしまうが……。

 それまでも、窪塚とは、同じ医大の同期といっても、授業の際にグループ分けされた中にたまたま居合わせただけってだけで、それほど親しい訳でもなかった。

 勿論、何度か話したりしたことはあるにはあったが、藤堂の話が出た折りにも説明した通り、元々窪塚が特定の誰かと深く関わるようなタイプではなかったからだ。

 それなのに、一番触れて欲しくない時に限って、珍しく踏み込んでこられたもんだから、余計に腹が立った。というのもあったかもしれない。

『……どうせ、血が苦手なのに外科医になりたいなんて、バカだとでも思ってるんでしょ?』
『い、否、俺は別にそんなつもりで――』
『もうやめて。アンタの意見なんて聞きたくないッ! もう二度と話しかけてこないでッ!」

 今思えば、完全な八つ当たりだ。

 それからだ。窪塚と距離を置くようになったのは。

 否、正確には、冷静になってから、酷いことを言ってしまったという罪悪感に苛まれ、顔を合わせづらくなって避けるようになったのだ。
< 93 / 353 >

この作品をシェア

pagetop