堂くん、言わないで。
微熱にキスして







「え?柏木くんが、……わたしと?」

「次、柏木くんって言ったらチューするかも」

「っ、ぇ、ちゅうするの!?」


一気に目が覚める。


柏木くん──これからは棗くんと呼ばないとキスされるらしい。

冗談なんだろうけど、わたしはおとなしく従うことにした。



「それで……えっと、なんだっけ」

「だから連絡先。夏休みに入る前に交換しておこうと思って」



そうだ、連絡先だ。


いまは授業の一環で映画鑑賞をしていた。


英語の授業だから字幕で観てるんだけど、わたしの席はどうにも恵まれなかった。


教室は暗いし、文字は小さいし、内容は小難しそうだし。

なんとか途中まではついていこうとしたけど、ついにギブアップしてしまい、うつらうつらしていたわたし。


すると肩を叩かれて、ぼんやりしたまま横を見ると。



本来なら空席だったそこに、満面の笑みをした棗くんが座っていたのだ。




そしていまに至る。


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