恋愛タイムカプセル
episode 6. 二度目の恋はうまくいく?
 暗闇の中、救急車のサイレンが鳴っていた。

 ぼんやりベッドに寝転ぶ私の耳に、スマホの通知音が届く。

 私は同じくベッドに投げ出されたスマホを手探りで探し、それの電源ボタンを押した。パッと画面が点いいた。メッセージが一件来ていた。

『今日はありがとう。体調大丈夫? 久しぶりに楽しかった』

 春樹くんからのメッセージに、悪いことはひとつも書かれていなかった。私はまた涙が込み上げ、嗚咽を漏らした。

 誘ったくせに急に帰るなんて失礼な女だ。きっと彼だって怒っている。

 なのにまだ彼は優しい。いつか、王子様と呼ばれていた頃と同じように────。

 今はなんだかそれが悲しかった。卑怯な自分を思い出すと、綺麗な彼の横に立つことが苦しくなる。

 彼はあの噂を知らないのかもしれない。だからこうして優しくする。私の誘いに応じたのも、そもそも私に対して特に何も感情を持っていないからだ。 

 彼がなにも知らないままなら私達はまた新しい関係を築けるかもしれない。

 けれど彼が変わった理由がなぎさちゃんと別れたことが原因だったら? 私がこのままそばにいて、のうのうと過ごすのは彼に対して失礼だ。

 私は返事を返さなかった。知らないふりをしてこのまま彼と仲良くすることもできたかもしれないが、それは彼を弄んでいるように思えてならなかった。

 私は彼ともう会う気はなかった。元々、高校を卒業してからは忘れていた。今更思い出す必要なない────はずだ。
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