寒い吐息が夜空に消えていく。

 街はイルミネーションで彩られて、人がごった返していた。誰も彼も幸せそうに微笑んで、隣にいる誰かの手を繋いで笑いあう。

 彼と出会ったのはこんな寒い冬の夜。この駅前だ。あの時は私も若かったなあ、なんて年老いたようなことを考える。まだ十代だけれども。

 私はなんだか懐かしい想いに囚われた。そんなに昔のことでもないのに、ここに来ると積み重ねた思い出が香りのように記憶の中に広がっていく。

「さっぶいなあ……」

 こんな寒い日なのに手袋を着けて来なかった。痛恨のミスだ。そう言いながら両手を擦り合わせ、両手にはめた白いリストバンドに触れる。もう何年も使いこんだリストバンドはもともと白かったけれど、今ではちょっと黄ばんでいた。けれど私はこれを白だと言い張る。これは、彼がくれた大事なものだから。

 人がたくさんいる中で、ふふ、と笑う。けれど誰も私のことなんか気にも留めていない。きっと、みんな自分の幸せを噛み締めるので忙しいのだ。そういう私も、そうだった。

 さっきコンビニで買ったコーラのボトルが手首にぶら下がってゆらゆら揺れる。飲みたい気分だけれど、もう少しだけ待っていよう。彼はもうきっと来るだろうから。

 今年のクリスマスも彼と楽しく過ごせるだろうか。今年もまた彼と雪が見れるだろうか。

 彼がうっかり遅刻して来たとしても、私はずっと待っていよう。

 それは、夢のような時間になるだろうから。