「うー、寒い寒い」

 私は校舎を出てサッカー部の部室に向かった。今日も恒例、サッカー部のお手伝いだ。

 中学になって二度目の冬が来ようとしていた。私は相変わらずサッカー部のマネージャーもどきとして働いている。さすがにもうルールは覚えたし、(仮)マネージャーの仕事も板について来たように思う。

 再び寒い季節の到来に、私は去年の冬を思い出していた。駅前のベンチで透くんと出会ってからもう一年も経ったのだ。サッカー部を手伝うようになって、友達も増えた。あの時とは確実になにかが違う。そしてそれらは全て彼がきっかけだった。

「おー、やっと来たか」

 部室には透くんを含めたサッカー部の部員達が数人来ていた。透くんはケンジくんと一緒にサッカーの雑誌を見ている。

「なに見てるの?」

「今度うちの部でこの試合見に行くんだ。監督から聞いてねえのか?」

 透くんの質問に、私は「聞いてない」、と首を横に振った。そして二人が見ていた雑誌を覗き込む。そこには社会人チームの試合のことが書かれていた。試合の日付は十二月二十五日。クリスマスの試合だ。

 ちなみにうちの部はあれからまともに勝てていない。だからプロの試合を見に行くようなやる気があったんだ、と正直驚いた。

「なんで見に行くの? 学生のでいいんじゃない?」

「うちの部が負けまくってるせいで今季の予算が余ってるんだってさ」

 ケンジくんはその金でなんか買ってくれたらいいのになと文句を言った。あまり褒められたことではないが、やっぱり気にしていないみたい。

「もうチケットは取ってるんだ。お前の分もあるって言ってたぞ」

「え? 私も?」

「当たり前だ。お前も一応マネージャーだからな」

「まあいいけど……」

 試合は十二月の中旬だ。今のところ予定もないし、断る理由もない。ひとりでいるよりは部のみんなといる方が楽しいだろう。

 それにしても、私は当たり前みたいにカウントされている。

 サッカー部の手伝いをするようになって半年ぐらい経ったわけだけど、部の一員になったというほど入れ込んではいない。けれどメンバーとは仲良くやっている。本当にお手伝いさん、みたいなポジションだった。

 もちろん、正式に入部届けも出していない。微妙な立ち位置でもOKされるのはこの部活がゆるいからだろう。

 こんなことなら正式に入部しておけばよかったな、と少しだけ後悔した。今更入部なんてできないけど、マネージャーならそれほどお金もかからないし帰る時間も遅くて済む。私にはとても都合がよかった。

 案外、透くんはそれを考えて部に誘ってくれたのだろうか。ふとそんな考えがよぎった。