いつもより早い寒波の訪れに、私はヒートテックだけでは足りなくて手袋やウインドブレーカーを着込んだ。

 透くんも寒いのだろう。何枚も重ね着して寒さをしのいでいた。その手には私がクリスマスにあげたグローブを身につけている。

「本っ当寒いよね……カイロがいくつあっても足りないよ」

 ゆかりちゃんは両手をこすり合わせて膝をガクガクと震わせる。さしものゆかりちゃんもこの寒さはダメらしい。私もダメだ。体がガチガチに固まって部活にならない。動いていれば多少はマシになるのだろうけど、マネージャーの私達には縁のない話だった。

「そうだね、雪でも降りそうな天気……」

 空は曇天だけれども、冷たさを孕んだ空気は梅雨のときとは違う。私は自然と雪が降ることを期待した。

「もう何年も見てないけど、今年は降るかなあ?」

「どうだろう……そしたらもう少しは楽しめるのにな」

 ゆかりちゃんと曇った空を見上げる。けれど、そこから白い結晶が降りてくることはなかった。

 雪なんて久しく見ていない。毎年ただ寒いだけの冬だ。

「今年のクリスマスは雪は降るかなぁ?」

 ゆかりちゃんがそう呟いて、思わず反応してしまう。

 クリスマスはいつも透くんと一緒にいた。いつも透くんと過ごしていた。今年もきっとそうなるんだろう。



 部活が終わり、私と透くんはいつものように一緒に帰る。透くんは取り留めもない話をしながらスマホをいじっていた。

 ────そうだ。クリスマスのことを聞いてみよう。もう日も近いし、何をするか決めておいた方がいいかもしれない。

 今年のクリスマスは日曜日だ。だから部活はない。それなら思い切ってどこかに出かけてみるのもいいかもしれない。私の頭の中で妄想が膨らんだ。

「ねえ、透くん。今年のクリスマスは────」

「俺は用事がある」

「え?」

 透くんはスマホから目を背けず、言った。

 私は口を開けたままぽかんとした。一瞬、聞き間違いかと思った。まだ全部言い切っていないうちに、彼は断った。

 なぜなのだろう。だって、透くんは毎年一緒にいた。いつも一緒に過ごしていた。断られたもことも、二人が離れたことも一度もなかったのだ。

「悪いが今年は無理だ」

 彼の台詞を頭で漠然と捉えながら固まったまま動けない。どうして急にそんなことを言うのだろう。何も言わなくても一緒にいられると思い込んでいた。こんなことになるとは思いもしなかった。

「お前も部活で疲れてるだろ。たまには休めよ」

「そう、だね……じゃあ、久しぶりに誰か誘って遊びに行こうかな。クリスマスだしね」

 ショックを受けた気持ちを笑顔で隠して精一杯笑ってみせた。だけど心の中は「どうして?」と言いながら困り果てている私がいる。

 透くんはもしかして、気を遣ってくれているのだろうか。私がずっと透くんとばかりいるから、もっと他に目を向けてみろってことなのかもしれない。

 でも、そうじゃないのだ。一番ショックなのは、クリスマスに透くんがいないことだ。

 おかしな話だ。今まで約束もしてないのに一緒に過ごしていた。なのに私は、今年も一緒だなんて勝手に思っていた。

 急に一緒にいられないなんて、ただ驚いて、ショックで……でも、そんなこと言えるわけもなかった。だって、クリスマスに誰と過ごそうが彼の自由なのだから。

 もしかして、一緒に過ごす相手が見つかったのかもしれない。そうだとしたら私がいたら嫌になる。

 私はまだ見てもいない、想像の、その幸運で幸福な女の子が────ただ羨ましかった。