愛され、囲われ、堕ちていく
夫婦
朝日がカーテンの隙間から二人を差している、朝。

凪沙はスマホの目覚ましが鳴るより早く、目が覚めた。
「んん…朝…?」
起き上がり、自分の身体を見る。
身体中、キスマークだらけだ。
毎日、夫・伊織に狂ったように抱かれているから。

そして、横で寝ている伊織を見る。
背中の刺青を見つめた。
十字架と王冠。
伊織が学生の頃、暴走族に所属していた時に彫った刺青だ。
伊織とはその頃からの付き合いで、伊織の義理の姉・紅音の親友が凪沙だった。

伊織は当時から最強の男だと言われていた。
暴走族では、総長を務め伊織の親はヤクザ組長・聖道 黒江の養子。(伊織は幼い頃に両親を亡くし、組長に引き取られた)
まだ20歳ながら力も強く、仲間の信頼も厚く、容姿も整っている。
伊織の女になりたいと渇望する、女性は多かった。

そんな伊織の心を射止めたのは、他でもなく凪沙だった。
歳は29歳ながら童顔で気が小さいだが、優しく穏やかな女性。伊織の周りにはいないタイプだった。
でも凪沙は、伊織の親友・蝶野 裕隆と付き合っていて、伊織のことは裕隆の親友という目でしか見ていなかった。
絶対に手に入らない女……
伊織はそう思えば思う程、凪沙が欲しくなる。
親友の彼女だからと必死に抑えても、抑えられない想い。

ついに伊織は、親友である裕隆から凪沙を奪う決意をしたのだ。

一番、最低な方法で━━━━━━

伊織は裕隆を殺し、その悲しみにつけ込んで凪沙を自分のモノにし、妻にした。

全ては、愛する凪沙を手に入れる為。

その為に親友の人生を奪い、今は凪沙の人生をも奪おうとしている。

そして伊織が裕隆を殺したことは、凪沙は知らない━━
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