あいにくですが、エリート御曹司の蜜愛はお受けいたしかねます。
「いや……あの、僕はあまり……」

何か言いづらいことがあるような口ぶりに「どうしたの?」と首を傾げる。
アレルギーとかでもあるのだろうか。じゃなければ―――

「もしかして未成年!?」

「っ、―――て、さすがにそれはない」

(かぶり)をふる彼を見ながら、「じゃあなに?何かあるなら早く言って」と訊く。
早くしないとビールの追加が来てしまうじゃないか。

「に…てなんだ……」

「え、なに?」

「苦手なんだ……ビールが」

「えっ!」

「お酒自体もそんなには好きじゃないんだけど、その中でもビールが一番苦手で……」

「そうなんだ……」

お酒の好き嫌いなんて、食べ物同様あって当たり前。
飲めないから悪いということも、飲めるから良いということもない。

中でもビールは苦みが強い飲み物だし、最近の若い子たちには飲めない子も割りと多い。

それなのに、『ビールが苦手』と口にした彼は、まるで罪の告白をしたかのように、気まずげに俯いている。

わたしは思わず、彼の頭をポンポンと軽くはたいた。

「別に気にしなくていいと思うわよ?お酒なんて飲めなくても生きていけるし、好みだってあるんだから」

彼の頭をそのまま「ヨシヨシ」と撫でる。
髪質がハル(あのこ)に似てる。背は実家の弟よりもちょっと高いかも。思ったよりも上に頭があって、長い間だと腕がだるくなりそうだな。
そんなことを考えていたら、案の定ビールが届いてしまい―――。

キャンセルが一歩間に合わず「しょうがないからわたしが飲むか」と言うと、彼は「全然飲めないわけじゃないから」といって、結局もう一方を引き取ってくれた。

(学生のうちはいいけど、社会人になったら少しくらい飲めた方がいいものね……)

そう思って無理に引き取ることはせず、「無理して飲まなくてもいいからね」とだけ声をかけておいた。


それなのに―――。


なにがどうして、あんなことになったんだ!?





【Next►▷Chapter2】
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