年上王子の不器用な恋心
進展する恋

仕事を終え、ロッカールームに行って帰り支度を始めた。
脱いだ服やエプロンを袋に入れ、服を着替える。

今日は土曜でお客さんが多かった。
うちの店は、昼は土日、夜は金土がお客さんが多くて忙しい。
首をコキコキと鳴らし、ゴムでひとまとめに結んでいた髪の毛をほどき、手櫛で整える。
スマホを取り出し、メッセージを送っていると茜さんが紙袋を手にやってきた。

「お疲れさま。あゆちゃん、例のシフォンケーキ」

「ありがとうございます!」

朝、注文していたシフォンケーキを受け取り、笑顔でお礼を言う。
ちなみに、代金は給料から引いてもらうようにしている。

「あと、抹茶のシフォンケーキが二切れだけ残ってしまったのを入れているんだけどいいかな」

「もちろんです。逆にいいんですかって言いたいぐらいです」

売れ残りでもなんでも茜さんのケーキが食べれるなんて最高だ。

「よかった。あと、近々、夏に向けての新商品の感想を聞きたいと思っているのでよろしくね」

「任せてください!楽しみにしています」

私はケーキの入った袋を手に「お疲れさまでした」と言って店の裏口から出た。
時刻は十八時過ぎ、特に予定がない日は真っ直ぐ家に帰っている。

そうだ、千尋くんに電話してみようかな。
来週からゴールデンウィークに入り、仕事が忙しくなるのでなかなか連絡も出来ないかもしれない。
今日は土曜の夜だし、たぶん千尋くんの仕事はないはず。
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