年上王子の不器用な恋心
親友からの報告と秘めた悩み

「今日は来てくれてありがとう」

亜樹がモジモジしながら言う。
その変な挙動に思わず顔がひきつった。

先日、話があるから私の休みの予定と仕事が早く終わる日を教えてと亜樹から連絡があった。
お互いの予定が空いている日を調整し、金曜の夜に会おうということになった。

自宅の最寄り駅の近くにある居酒屋に十九時で予約したとメッセージが届いた。
私は仕事を終えてからだったので、少し遅れて居酒屋に入ると、すでに亜樹はテーブルに座っていた。
私はてっきり亜樹ひとりだと思っていたのに予想外の人たちがいた。
亜樹の隣に松田くん、テーブルを挟んだ反対側に内藤くんが座っている。
これはどういう組み合わせ?と首をかしげた。

「あゆはそこに座って」

亜樹の目の前の席が空いていたので、そこに座るように促された。
私はシャンディーガフを注文し、三人の顔を見回す。

「これはどういう集まりなの?」

疑問に思っていることを言えば、亜樹がチラッと松田くんを見て口を開いた。

「あのね、松田くんと付き合うことになったの」

「えー、そうなんだ。おめでとう」

「ありがとう」

唐突に告げられた言葉に何となくそんな気はしていた。
亜樹の恋が実ったってことか。

「内藤くんが私たちの仲を取り持ってくれたんだ。だから、内藤くんのお陰なの」

ね、と亜樹が松田くんを見れば「そうだね」と照れくさそうに頬を掻く。
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