13番目の恋人
第13話

小百合

家に帰ると
「今回は組み立てなくていいね」
野崎さんが手早く椅子の梱包を解いて、ラウンドテーブルに合わせて置いてくれた。

私がそれをサッと拭くと、野崎さんが片方の椅子をどうぞ。と、引いてくれる。よくレストランで店員さんがしてくれる仕草だ。
 
「では」もっともらしく、おすましした顔をして椅子に腰を落とした。
「では、俺も」
「「いいね、椅子」」
 
今朝までは無くても良いかなんて言ってたくせに、調子がいい。
 
「あー、でも椅子っていいですね」
「そうだね」
 
ひととき、椅子の良さを堪能した後は、また二人で並んで食事を作ることにした。
 
「料理の出来る人って、冷蔵庫にあったものでパパッと作るってよく言うけれど、ここの冷蔵庫には、何でもあるから、俺でも何かしら作れそうだ」
「昨日、張り切ってしまって……」
 
普通、張り切るというのは作る方だろうに、私は買う方に張り切ってしまった。何をしているのだろう。ほんとは手料理を振る舞う予定だったのに。
 
「さーて、何作ろうか。これだけ材料があってもパパッとは無理だけど」
「二人で作れば何とか……すみません、情けなくて」
「ん、楽しい。こんな機会なかなかないからね」
 
野崎さんは、全く嫌そうにもせずに、うきうきしてるみたいだった。
 
「あ、魚がある!」

 彼のその声の感じ、どうやら野崎さんはお魚が好きらしい。今度からお魚をいっぱい買おう。
 
「魚、日持ちしないから、そんなに買わないでね」
 私の考えを読んだのか、そう言われてしまった。
< 116 / 219 >

この作品をシェア

pagetop