13番目の恋人
　そこから、俊くんがどうやって人事の人に口利きしたのか知らないけれど、私は誰にも疑われる事もなく、というか社員数の多いこの会社では、誰も違和感を持たなかったのだろう。

　新人研修が終わると、私は秘書室に配属された。

　……役員秘書。じょうむ、とりしまりやく……？
　とはいえ、秘書は私一人ではないらしくほっとした。

「あのねぇ、いきなり新卒が一人で役員秘書になるわけないでしょう？ ビジネスマナーだってロクに知らないのに。あなた、天然？ それとも……」
　バカなの？と言われた事だけは分かった。「質問ある？」と、聞いた人事の人に

「いきなり、役員秘書なんて、どうしたらいいですか？」
　そう尋ねた私に、人事の人の代わりに秘書室の先輩はバッサリ切り捨てるように言った。

「新入社員だからね、園田さん。最初は何も知らないものだよ」
　人事の人がその女性に苦笑いしたが、その人は私にチラリと面倒臭そうな視線を投げた。

　この園田万里子さんは、私のイメージする“秘書”そのまんまの美人で仕事の出来る女性だった。

　ただ、少し……威圧感がすごい。私はこの人に仕事を教わる事になった。

「よろしくお願い致します」
　初めての、同僚。初めての、先輩だった。
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