13番目の恋人
第17話

小百合

 相変わらず野崎さんは忙しそうだったけれど、少しでも早く仕事が終わる日とか、翌朝の仕事が午後だけだったりする時は『今日、待ってて』と言われ、《《ちゃんと》》泊まる準備をして彼の家で待っていた。
 
  野崎さんはいつでも嬉しそうに帰って来たし、「嬉しい」と言葉にもしてくれた。
 
 私はまだ、「野崎さん」だったり「の、頼人さん」だったり「よ、頼人さん」だったりうまく呼べてはないのだけれど
 
 野崎さんは「小百合」って自然に呼んでくれるようになった。私の定位置は相変わらずソファのはしっこだけど、そのすぐ横が野崎さんの定位置なので、「まあ、いいか」と野崎さんは言っている。
 
 野崎さんが隣にいると、緊張と嬉しさが入り交じって、どうしてもキスしてほしくなって目を閉じる。野崎さんが優しいキスを何度かくれて。私の唇を割って、中に入ってくるのがトリガーになって、ベッドへ行く。
 優しく優しく抱いてくれる。時々は私から「もっと」って言えるようになって、野崎さんは満足そうだ。もちろん、私も満足だけれど。
 野崎さんの行為はとても優しいのに、翌日は筋肉痛になるという不思議だ。
 
「毎日仕事から帰ったら、小百合がいたらいいのに」なんて、可愛い事を言う。
 
 叶うか、叶わないか、それはいつでも重要ではなくて、彼が、そう言ってくれる気持ちがいつも嬉しかった。
 
 だから、つい
「頼人さん、大好き」と、私も言ってしまう。
 
 
 
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