13番目の恋人
第22話

頼人

「今はどんなお仕事をされているの?」

 ブッシュ・ド・ノエル上のサンタをどちらが食べるか譲り合って、彼女にサンタを。俺にトナカイで折り合いがついたところで、彼女が俺にそう尋ねた。
 
「……N.は俺の実家なんだけど。聞いてない? 」
「あ、えっと、どのみちどんな人でも結婚するのだからと、詳細聞いてなくて、その、ちょっと聞き逃してしまっていたのかも」
 
 凄い驚いている小百合に……興味がなかったのだと気づく。ついでに俺だって分かった後も興味がなかったのかと思うと複雑だが、彼女は俺ならばそれでいいのだろう。そう思うと、今度は少し嬉しかった。
 
「美味しいね」
「そうだな」
「コーヒーも美味しい」
 
 途中で、ちょっと、盛り上がってしまったのでコーヒーはすっかり冷めてしまって、旨いはずないのに
 
「ほんとに、旨いな」
 俺もそう答えた。でもやっぱり、入れ直すのに立ち上がった。
 
 相変わらず、ソファのはしっこにちょこんと座ってる小百合に、笑みがこぼれる。ブッシュ・ド・ノエルの中にいちごを見付けて喜んでいる。見た目と違って、随分と幼い。それも今はとても可愛いと思う。
 
 俺もすっかり……あっちのグループに……。いや、俺はちゃんと、女性として、好きだからな。と、一人頷く。

「これ、またお昼ご飯食べられなくなるね」
「いいよ、特別。今日はクリスマスだから」
「わ、そう? お酒飲んだりする? 」
 
 残念ながら、明日は仕事だ。なんて言わなきゃならないけれど
 
「早い時間に少しだけね」どのみち彼女は少ししか飲めないのだから。
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