13番目の恋人
第3話

小百合

常務室をノックし、中に入った。
「ちょっと、中で待ってて」と俊くんから言われていたのでそのまま待つ事にして、ソファに腰かけた。

……いけない。つい。慌ててソファから立ち上がった。

俊くんから声を掛けられたのは、プライベートの俊くん仕様ではあったけれど、ここは常務室で、私は一秘書である限りソファでのんびり待つなんて。

すぐに、戻るだろう。そう思って立ったまま待つことにした。

朝は晴れていたのに、少し曇った天気が気になり、窓辺へと向かった。

窓の外、俊くんの姿が見えた。間もなくこの部屋へ入ってくるだろう。

しばらくすると、ちょうど、外にいた俊くんがエレベーターに乗って、この部屋に上がってくるくらいの時間にドアが開く音がした。

「俊くん、こっから会社に入ってくるの見えたよ、ジャスト!……」

そう言って振り返った。
窓から見えた俊くん。そして、この部屋にノックもせずに入ってきたこと。

 ……だから、油断した。さっき自分を戒めたばかりなのに。


「し、失礼致しました」
慌てて詫びて、俯いた。
そこにいたのは、俊と背格好は似ているが、違う社員だったから。

彼も驚きはしたものの
「いや、こちらも誰もいらっしゃらないと思っていたので……」
と、すぐに大人の対応をしてくれた。
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