13番目の恋人

藤子

 中学を卒業したら、ピアスをしてもいいと両親との約束だった。
 
 長い間お気に入りだった、恋愛運が上がるというローズクォーツのイヤリングもピアスに作り替えるほどの情熱もなく、私の恋も……結局叶わなかったな。
 
 そのイヤリングは机の引き出しにしまいこんだ。
 
 
 ──弟しかいなかった私は、妹が欲しいとずっと思っていた。だって、慶一郎は虫ばっかり採ってくるんだから。妹とおしゃれして遊んでるお友達が羨ましかった。
 
 だから、妹が産まれるって聞いた時は飛び上がって喜んだ。
 
 妹は想像のそれはそれは100倍可愛かった。ちっちゃい!いい匂い!私は夢中に、なってお世話をした。
 
 
 ──
 
「お姉ちゃん、ピンクのイヤリング、貸して」モジモジしながら小百合は俯いてそう言った。
 
「欲しいの?」そう聞くと、おっきな目をぱっと輝かせて
「うん」って、言った。
 
 自分から欲しいなんて言えない大人しい妹に、そのイヤリングをあげた。
 
 ずっとお気に入りだったけれど、私にはもう必要ない。そうか、小百合が使うならちょうど良かった。
 
 何度も何度も鏡にうつしては嬉しそうにしている小百合に「おませさんだなあ」って言った。
 
 可愛い。ほんと、可愛い。
 
 ───
 
 結局、私も小百合も好きな人と結婚出来たのだから、あのローズクォーツは効いたのかもしれない。と、時々思い出す。
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