13番目の恋人
「何かしたいことがあるの? 」

恋人が欲しいなんて言えず、それ以外で答えた。

「たくさんあります。例えば、部屋にテーブルが欲しいとか、そんなことなんですけど」
「うん、明日買いに行けばいいじゃない」
「そうなんですけど、一人だから、いらないかなーとか、いつか恋人が出来たら買おうかなーとか、ずーっと考えているうちに時間が過ぎてしまって……」

結局、恋人の話をしてしまった。

「手帳、持ってる? 」
「ええ、もちろん」
私は慌ててシステム手帳を出した。

「プライベートの、よ」
「いいえ」

スマホのスケジュールアプリ、いや内蔵のカレンダーで十分だ。

……予定などないのだから。

「ふむ」
万里子さんは顎に手を置いて何やら考えていた。“ふむ”なんて、もっともらしく考えて

「明日、見に行きましょう、そのテーブル」
「え、ええ? また急ですね」
「急? ずーっと考えてたのでしょ? 」
「まあ。いつか、買おうかなって……」
「このままじゃ、こないわよ、“いつか”なんて。だからその“いつか”を明日にしちゃいましょう」
「……はい」

万里子さんの行動力はこういうところなのだろう。私には予定などない。だけど、期限はあるのだから。恋人が出来る前にテーブルを買ったっていいじゃないか。
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