13番目の恋人
──この日は、常務と同行し、直帰となった。仕事はここまで。

そんな線引きの後、常務改め俊くんは私の家までタクシーで送ってくれる。

「リスト、目を通したか?」
「うん、ざっと……顔と一致しない人もいらっしゃるから」
「ふん、そっか」
「ねぇ、企画室長はどうして駄目なの?」
「……何、あいつに惚れたの?」
「違うよ、駄目ってわざわざ書いてたから」
「ああ、そっか。逆に気になるよな。失敗、失敗。あいつは、結婚相手が決まってる。けどまあ、今は独身だし良い男だろ? それに、出向だから期間限定で会えなくなるしな。……小百合も期間限定といえば、そうなのか。25歳までだっけ?」
「……それは、結婚の期限だよ」
「結婚したら、仕事を続ける必要はない。わかるな? それでもしたいと思うなら、何かしら考えたらいい。その時はお前のご主人になる人と相談して。……今は楽しんだらいい」

私の気持ちを察したのか、俊くんはさらりと私の頭を撫でる。完璧な、幼児扱い。

「……じゃ、めぼしい発展はまだか」
少しほっとしたように俊くんはそう言った。

「どうしてほっとするのよ」
「んー、お前に恋人出来るのはなんか、寂しいってか、見たくないってか」
「はは!俊くん完璧にうちの身内と同じ発想だ」

私がそう言うと、俊くんは複雑そうな顔をして、私を軽く睨んだ。
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