13番目の恋人
第6話

小百合

──お昼休み
社食はいつも通りの賑わいを見せ、この中に大宮くんもいるのだろうか、とフロアを見回した。

少し緊張してしまって、いつもより少な目に小鉢を選んでいた。メインは鰤の塩焼き。ここのは、皮もぱりっと焼けて美味しのだ。
万里子さんは、カツ丼。しかも特盛。彼女は色々意外な面が多い。

遠目に、“あの子が大宮くんよ”って教えてくれるのだと思っていた。ところが、
「大宮くん、ここ席空いてるわよ!」
なんて大きな声で私たちのテーブルに彼を誘導するもので、私は固まってしまった。

「ああ、すみません。失礼しまーす」
その人も、何の躊躇もなく私達の前に自分のトレーを置いた。トレー、二つ。

ん、二つ?
顔を上げると、大宮くんらしき人と、その横に、……つまり、私の前に企画室長。

「やあ、君か。お邪魔するね」
「……はい」
「室長も今日は社内ですのね」
万里子さんが無難に挨拶をしている。

「そうなんだよ、今週は嵐の前の静けさってとこかな」
万里子さんと室長は斜めに会話を交わすもので、私も、斜めに視線を走らせた。その斜めの席の大宮くんとバチッと音がするほど目があった。

大宮くんは、逸らすことなくにっこりと
「話すの、初めてだね」と、笑った。
「うん、同期です。私……」
私も、慌てて練習していた笑顔をここで披露した。
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