君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~
1、過去に囚われたまま



 教室内には賑やかな子どもたちの声。

 友達を追いかけ走り回る子。絵本を出して読んでいる子。まだ登園後の支度が終わらず、遊び着に着替えている子。

 同じ五歳児でも、ひとりひとりの個性があり、カラーがある。

 得意なこと苦手なことが違い、いつも元気な子もいれば大人しい子もいる。

 そんなひとりひとり違う子どもたちに寄り添い、人格形成に重要だと言われる幼児期を共に過ごす、責任のある幼稚園教諭の職についてから早五年──私、都築(つづき)舞花は大好きな子どもたちに囲まれ毎日充実した日々を送っている。


「はーい、ひまわり組さーん。朝の会始めるよー」


 私のかけた声に、クラスの子どもたちはそれぞれ動き始める。

 本を読んでいた子は本棚に片付け、朝の準備が途中の子はスピードアップで遊び着を身につけバッグをしまう。

 入口近くに鎮座するピアノの前にかけ、集まる合図にピアノを『チャチャン!』と鳴らした。

 片付けや準備中の子たちを焦らせず待ち、決められた自分の場所に子どもたち全員が並んだのを目視で確認し、朝の会の曲をピアノで弾き始める。


「おはよ! おはよ! 先生おはよう! お友達もおはよう!」


 子どもたちの元気な歌声が教室内に響き渡る、毎朝の光景に心が弾む。

 今日もまた一日張り切っていこうと心の中で思いながら、子どもたちの歌声に合わせて一緒に朝の歌を伴奏と共に口ずさんだ。

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