君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


 大事には至らなかったものの精神的に酷くショックを受け、その後は男性恐怖症になってしまったと聞いていた。

 男が怖い。会話すらもできなくなり、なるべく男性と接触しなくて済むような生き方をしていると話す聡子さんはいつも複雑そうだった。

 きっとこのまま結婚もせず、一生ひとりで生きていくのだと思う。

 そんな話を聞いていただけに、実は付き合っている相手がいて、更には結婚をする予定だという吉報に驚く。

 会ったこともないけれど、祝福の気持ちでいっぱいになった。


「それは、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「相手の男性とは、もう会われたんですか?」

「ええ、少し前にね。誠実そうないい人だったわ」


 男との関りを断った彼女が結婚を望んだのだ。彼女の心の傷を癒し、寄り添うことのできる相手なのだろう。


「それなら安心ですね。でも、本当によかった」

「久世先生にも娘のことは話していたから、お会いしたら報告しないとって思っていたのよ」

「わざわざ。ありがとうございます」


 湯気の上がる味噌汁とご飯茶碗がカウンターの上に出てくる。

 今日のご飯は、旬のタケノコがごろごろ入った炊き込みご飯だ。

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