君との子がほしい~エリート脳外科医とお見合い溺愛結婚~


「え、めまい? 大丈夫なの?」

「大丈夫よ。疲れてるのかもしれないわ。今日は早めに寝る」


 肉体的な疲れというより、精神的な疲労ではないだろうかと思う。

 結婚が破棄になって、母は自分のことのようにショックを受けていた。

 私に気づかれないように泣いていたのも知っているし、あの日以降、深夜頻繁に目を覚ましていることも知っている。

 結婚をすることを何より喜んでくれていたのだ。

 体に支障が出てくるほどの心労をかけてしまっていると思うと、胸がぎゅっときつく締め付けられる。


「うん。お店、閉めれそうなら早めに閉めて休んだほうがいいよ」

「そうね。ありがとう」


 そんなやり取りの最中、入り口の引き戸がカラカラと開く音がする。


「あら、野田さん、いらっしゃい」


 ご近所の常連ご夫婦が来店し、帰宅したまま店内に立っていた私も「こんばんは」と挨拶をする。

 結局、母との話はそこで流れるように終わってしまった。


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